エピソード573 出る杭は必ず打たれます
『私はバーデン家の女辺境伯の身分と、内務副大臣にして衛兵隊の総隊長の立場と、帝国軍の大将の軍階級を父上から継承した。それに加えて天から根元魔法の素質を授かりし選良でもある女魔法使いという、封建制度を政治体制に採用していて根元魔法が盛んな帝国においては、帝国之住民の殆どが羨む身の上に生まれたが』
内務副大臣であらせられます、バーデン家の女辺境伯閣下が夕餉の席にて、ロートリンゲン公国産の葡萄酒が献酌をされています、クリスタル・硝子製の酒杯を揺らされながら。
『跡継ぎを儲ける為に、強力な根元魔法の使い手である魔法使いを伴侶としなければならないのは、仕事が楽しい私としては不満でな。まったく人間という生き物の欲深さには我ながら呆れる』
内務副大臣であらせられますバーデン家の女辺境伯閣下に、帝国騎士身分のケルン家の領主代行であらせられます隼御兄様に、帝都憲兵隊の副総監にして伯爵閣下であらせられます御父様の娘の私に、財務警察の警視正であらせられますレバークーゼン家の子爵閣下の庶子にして高潔な貴公子であらせられますアンリ卿に、帝都の宮城にて皇帝陛下の御信任の厚い官吏として忠勤あそばれていられますゾーリンゲン家の男爵閣下の御息女であらせられます令嬢の希望さんに、帝国におけます舟運の大動脈となっていますライン川の東岸にて御領地と領民を御治めになられていられますデュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息のルネ卿は、帝国で暮らされています帝国之住民の殆どが羨む境遇にありますが。
『人間は全てを手に入れる事は出来ないからな』
内務副大臣であらせられますバーデン家の女辺境伯閣下による御言葉に対しまして、私達は恭しく深々と御辞儀を行いまして。
『はい。女辺境伯閣下』
女辺境伯閣下は、年下の私達に対しまして笑みを見せられまして。
『封建制度を政治体制に採用している帝国における最強の処世術は、身の程を弁えて序列を尊重して秩序を守る姿勢を明確にする事だ。出る杭は必ず打たれるからな♪』




