エピソード572 本人からすれば当然の要求であっても
『花は、アンリと話が弾んでいたみたいだな』
『はい。希望さん。ルネ卿は御父君であらせられます上級の騎士様が御治めになられていられますデュッセルドルフ家の御領地と、私の御父様が伯爵閣下として御治めになられていられますケルン家の御領地との、共通点と相違点を注意深く観察なされていられました』
今宵の宿泊を行います宿泊施設の室内にて、湯浴みを済ませました私とナディーネさんは、大形の鏡であります姿見の前の椅子に腰掛けまして。使用人の女性に金髪と灰白色の髪の毛を、櫛で梳かしてもらいながら話をしています。
「シュッシュッシュッ」
『アタシの親父が男爵の爵位で治めるゾーリンゲン家の領地は、ライン川の東岸に位置する子爵閣下が御治めになられているレバークーゼン家の御領地の北東にあるからな。帝国の舟運における大動脈でもあるライン川から離れているから、ライン川沿いのケルン家とレバークーゼン家とデュッセルドルフ家の御領地とは少し異なるな』
やはり大河でありますライン川沿いの御領地とは、ナディーネさんの御父君であらせられます男爵閣下が御治めになられていられますゾーリンゲン家の御領地とは、違いがあるようです。
「シュッシュッシュッ」
『ルネの親父さんが治めるデュッセルドルフ家の領地は、帝国の舟運における大動脈のライン川の東岸に位置するから小領主の中では非常に恵まれていると、大河に面しないゾーリンゲン家で生まれ育ったアタシから見れば感じるんだがな』
ナディーネさんの御父君の男爵閣下は、帝国の君主であらせられます皇帝陛下に封土受領之誓いを奉りまして爵位を叙爵されています、止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方の一員でありますが。経済的には大河でありますライン川の東岸の御領地を御治めになられていられますデュッセルドルフ家の上級の騎士様の方が、恵まれた立場にあると御考えのようです。
『人間の欲望には際限が無いという事でしょうか?。ナディーネさん』
私の疑問に対してナディーネさんは、使用人の女性に灰白色の髪の毛を梳かしてもらいながら苦笑を浮かべられまして。
「シュッシュッシュッ」
『親父の長男でもある勝者之民の兄貴は、本来なら貴族諸侯の家門の嫡男として家督と領地と爵位を受け継ぐはずなのに。帝国軍の佐官の少佐の軍階級を実力で手に入れた帝国騎士身分の魔法使いだからな。帝国の君主であらせられる皇帝陛下の軍隊である帝国軍で、職業軍人として生きていきたいと望んでいる』
ニコラオス少佐は、ケーニヒスベルク家の辺境伯閣下が大将の軍階級にて指揮なされていられます東方拡大戦争にて、ザクセン公国の最強の魔法使いを一騎討ちにて討ち破られた勇猛果敢で非常に優秀な御方であらせられますけれど。
『封建制度を政治体制に採用しています帝国におきましては、ニコラオス少佐の望みを贅沢に感じられます、上級の騎士様や免状貴族身分や平民身分の人物は、数多く居られるかと思われます。ナディーネさん』
地方部出身の平民身分の村娘でした私による、忌憚の無い見解を聞かれましたナディーネさんは。使用人の女性に灰白色の髪の毛を櫛で梳かしてもらいながら、藍色の瞳だけを動かされまして。
「シュッシュッシュッ」
『人間は他者からどう見られるかは完全には解ら無ぇからな。本人からすれば当然の要求であっても、周囲からすれば何て我儘で贅沢なんだと感じる事も数多くあるからな。フロリアーヌ』




