エピソード569 御父君に関しては頭が痛い立場
『感謝をします。貴方達も下がって食事を摂って下さい』
『有難う御座います。御嬢様』『心底よりの御礼を申し上げます。御嬢様』
枝葉の間から木洩れ日の差し込みます森の中で、昼餉を摂る為の休憩を取っていますけれど。食事の用意をしてくれましたケルン家に仕えています使用人に、心付けとして帝国ターレルの銀貨を渡しますと、私はアンリ卿と希望さんとルネ卿の四人だけになりました。
『花はかなり大量の帝国ターレルの銀貨を持って来たみたいだな?』
デュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息でもありますルネ卿の問いに頷きまして。
『真実さんから出発前に、使用人に渡す為の銀貨が大量に必要になるはずだとの助言を受けまして。帝都の金融機関で口座からお金を降ろす際に、窓口で全部銀貨にしてもらいました』
私の説明を聞かれたナディーネさんが笑われながら。
『ヴェレーナは本当にそういう細かい点での気配りが出来るな♪』
ナディーネさんの見解にアンリ卿も同意をされまして。
『生き馬の目を抜く厳しい競争に勝ち抜き、帝都にて商売に成功なされていられます免状貴族身分の豪商にして、父上も御認めになられます芸術への造詣の深いご父君による薫陶だと思われます。令嬢フロリアーヌ女史に、令嬢ナディーネ女史』
アンリ卿の御父君であらせられますレバークーゼン家の子爵閣下は、財務警察の警視正という要職に就かれていられますが、ヴェレーナさんの父親の事は品評会の授賞式の会場にて、高く評価なされていられました。
『帝都で商売に成功している免状貴族身分の豪商の方が、小領主の親父よりはよっぽど止事無い身分であらせられる貴族諸侯の皆様方に近く感じるな』
ルネ卿はそう仰られますと、革製の水筒の水を一気に飲まれまして。
『水を近くの川で補充してくる』
そう言い立ち上がられましたルネ卿の後ろ姿を、私とアンリ卿とナディーネさんは見送りましてから。
『ルネも大変だな。帝都魔法学園のある帝都で暮らしていれば見える物事を、手紙だけで父親に伝えるのは限界があるからな』
ゾーリンゲン家の男爵閣下の御息女であらせられますナディーネさんの見解に、レバークーゼン家の子爵閣下の庶子にして高潔な貴公子であらせられますアンリ卿も同意をなされまして。
『令嬢フロリアーヌ女史の御父君であらせられますケルン家の伯爵閣下は、帝都憲兵隊の副総監という要職に就かれていられまして。私の父上であらせられますレバークーゼン家の子爵閣下は、財務警察の警視正という要職に就かれていられまして。令嬢ナディーネ女史の御父君であらせられますゾーリンゲン家の男爵閣下は、宮城にて皇帝陛下による御信任の厚い官吏として忠勤に励まれていられます』
アンリ卿の仰られる通りです。
『御領地と領民を御治めになられていられます御領主の中で、帝都との直接の繋がりが無いのは、ルネ卿の御父君であらせられますデュッセルドルフ家の上級の騎士様だけですから。帝都魔法学園にて寄宿生活を送られています子息のルネ卿が、帝国郵便の郵便馬車にて頻繁に手紙を届けましても、完全に帝都の事情を説明するのは不可能だと思われます』
ヴェレーナさんの父親は免状貴族身分の豪商ですし、ザスキア女史の御父君は外務省にて勤務なされて今頃はザクセン公国方面に向かわれている途中だと思われます帝国騎士様です、恵さんの父親は平民身分の御用商人ですから、私達の中ではルネ卿が一番御父君に関しては頭が痛い立場なのだと思われます。




