エピソード567 私とルネ卿
『ブゥルウウウッ』
『よしよし良い子だな♪』
ケルン家の伯爵閣下であらせられます御父様の城館の厩舎にて、デュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息でもありますルネ卿が、笑顔で馬の首を撫でてあげていられますので。
『馬の扱いに手慣れていられますね。ルネ卿』
地方部出身の平民身分の村娘でした私としましては、一日でも速くケルン家の令嬢に相応しい乗馬の技術を身に付けたく思いましてルネ卿に声を掛けますと。
『俺の親父は小領主とはいえ領地と領民を治めているからな。幼い頃から馬に騎乗して視察を行うという、乗馬に慣れ親しむ環境で育ったからな。花』
成る程。やはり希望さんが仰られましたように、乗馬の技術の習得には慣れが必要なようです。
『フロリアーヌもツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様のカール卿の妻になれば男爵夫人様だからな。御夫妻で御領地の視察を馬に乗り行う必要があるから、乗馬の技術を習得したいという気持ちは解るな』
帝都にあります幼年学校にて寄宿生活を送られていますカール卿と兵士卿と雑貨屋さんとは、帝都魔法学園にて根元魔法を学ばれていられますアンリ卿とルネ卿は、同性の男子学生同士で親しい友好関係を築かれていられます。
『アンリとナディーネの方も準備は整ったようだな』
レバークーゼン家の子爵閣下の庶子にして、黒髪と褐色の肌色をされていられます高潔な貴公子であらせられますアンリ卿と。軍人一家でもありますゾーリンゲン家の男爵閣下の御息女であらせられます、女子学生としては背の高い灰白色の髪の毛と藍色の瞳をされていられますナディーネさんが。乗馬服を着用なされて並んで馬に騎乗なされていられる姿は、非常に美しく絵になると感じました。
『絵師の灰色さんが見ましたら、創作意欲が刺激される美しさですね。ルネ卿』
私の感想を聞かれましたルネ卿は、慣れた動作にて馬に騎乗されましてから頷かれまして。
『ああ、同感だな。レバークーゼン家とゾーリンゲン家が共同で害獣駆除を行う狩猟の際にもお似合いの二人だとは感じていたが、帝都魔法学園で共に根元魔法を学ぶ学友関係となってからは、更に強くそう感じるようになった』
乗馬にまだ慣れていない私は、厩務員に手伝ってもらい馬に騎乗しますと、心付けとして帝国ターレルの銀貨を渡しましてから。
『アンリ卿とナディーネさんは背筋を伸ばされた美しい姿勢にて騎乗なされますから、後ろから観察をさせて頂くだけでも勉強となります。ルネ卿』
ルネ卿は真剣な表情にて話した私に対して、朗らかに笑われまして。
『フロリアーヌは本当に勉強熱心だな。偶には肩の力を抜いた方が良いと思うぜ♪』
ルネ卿の指摘に対して私は、馬の騎乗で苦笑を浮かべまして。
『確かにルネ卿の仰られる通りですね。本日は馬での移動を楽しみながら景色を眺める事にします』
伯爵閣下であらせられます御父様の御領地の様子を、娘として見ておきたいという気持ちもあります。
『俺も伯爵閣下が御治めになられているケルン家の御領地を馬で移動するのは初めてだからな。帝都魔法学園に入学する為に帝都に移動した時は、子爵閣下が御治めになられているレバークーゼン家の御領地内の城下町にある城館の内部に設置してある魔道具の転移門を通過して、帝都の貴族街にあるレバークーゼン家の上屋敷まで瞬間移動をしたから。ライン川の西側の帝都方面を馬に騎乗して移動した経験は無いからな』
成る程。魔道具の転移門は非常に便利ですけれど、目的地まで瞬間移動をしてしまいますから、途中の土地を通過する過程を全て省略してしまいます。
『行こうぜ。フロリアーヌ♪』
天真爛漫な笑顔にて話されましたルネ卿に釣られまして、私も笑みを浮かべまして。
『はい。ルネ卿♪』




