エピソード563 ライン川沿いには建てられない城館
『ヒュウウウーーーッ』
『ふうっ…。夜風が心地好いな』
伯爵閣下であらせられます御父様の城館内にて開かれました晩餐会が恙無く終了しましたので。私と、レバークーゼン家の子爵閣下の庶子にして高潔な貴公子であらせられますアンリ卿と、軍人一家でもありますゾーリンゲン家の男爵閣下の御息女であらせられます女子学生としては背の高い希望さんと、デュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息のルネ卿の四人にて、魔道具の照明器具による淡い明かりが灯されています庭園を散策しています。
『花とアンリとナディーネは、内務副大臣閣下と先のケルン家の女伯爵閣下という、非常に強力な魔力を身に纏われていられる女魔法使いの御二方の御前でも平然としていたな』
普段は元気一杯な男子学生のルネ卿ですが、内務副大臣であらせられますバーデン家の女辺境伯閣下と、先のケルン家の女伯爵閣下であらせられました御婆様という、非常に強力な魔力を身に纏われていられます女魔法使いの御二方の御前では、無理をして晩餐会の食事を摂られていたように御見受けをしました。
『料理の味が全く解らないという表情をしていたなルネ』
夜会服姿のナディーネさんが、藍色の瞳による視線を向けながら話されますと、ルネ卿は素直に頷かれまして。
『内務副大臣閣下が、甘藍の細切りを薄塩で漬けて自然発酵させたザオアー・クラオトについて御話になられていたが、全く味が解らなかった』
ルネ卿による話を聞きました私は、金髪に着けています髪飾りを指差しまして。
『意志ある魔道具でもある髪飾りも沈黙したままです。ナディーネさんの腕輪も同じではないですか?』
私の問いに対してナディーネさんは、左手首に填めていられます意志ある魔道具でもある腕輪に視線を向けられまして。
『ああ。アタシの腕輪もフロリアーヌの髪飾りと同様に沈黙したままだな。やはり女辺境伯閣下と女伯爵閣下という、非常に強力な魔力を身に纏われていられる女魔法使いの御二方が、心底恐ろしいようだな』
髪飾りと、脳内会話の念話を交わすのに慣れていますから、沈黙が長く続くと違和感を覚えるのは、ナディーネさんも私と同様なようです。
『ヒュウウウーーーッ』
『この夜風は東方向から吹いて来ていますね。アンリ卿の御父君であらせられます子爵閣下が御治めになられていられますレバークーゼン家の御領地は、伯爵閣下であらせられます私の御父様が御治めになられていられます御領地の東側を流れる、ライン川の対岸に位置しましたね』
私の確認に対して、黒髪と褐色の肌色をされています、高潔な貴公子であらせられますアンリ卿は頷かれまして。
『はい。令嬢フロリアーヌ女史。ケルン家の帝国騎士様と兄上が共同にて秩序回復をなされた土地も、ケルン家の城館の東側に位置します』
五分の盃を交わされまして義兄弟の契りを結ばれました隼御兄様とジェローム御兄様ですけれど。領主代行としてケルン家とレバークーゼン家の御領地を帝国騎士身分にて御治めになられていられます。
『デュッセルドルフ家の後ろ盾となって下されている子爵閣下のレバークーゼン家の城館も、舟運の大動脈となっているライン川沿いには建てられてはいないな。洪水対策か?』
親友でもありますルネ卿による疑問に対しまして、アンリ卿は黒髪を揺らしながら頷かれまして。
『それもあるが、今でこそ当家とケルン家の関係は良好だが、一時期は領界争いで緊張関係にあったからな。ライン川沿いに城館を建てると交易船による舟運は便利になるが、夜襲を受ける恐れが以前はあった。ルネ』
自力救済の慣習のあります封建制度を政治体制に採用しています帝国におきまして、止事無い身分であらせられます貴族諸侯として御領地と領民を御治めになられるのは、本当に大変であると思います。




