エピソード552 恵まれた環境
『家の親父は普段から職場の宮城に泊まり込みで仕事をしているが、軍務省勤務の爺さんや、外務省勤務のザスキアの親父さんと比べれば、帝国の国境地帯にある前線基地への異動を命じられない分は、まだましなのかも知れねぇな』
帝都魔法学園の談話室から、学生寮の女子寮にあります真実さんの部屋に場所を移しまして。私とヴェレーナさんは寝台の上に並んで腰掛けながら、勉強机前の椅子に腰掛けていられます希望さんと御話をしています。
『ナディーネさんの御父君であらせられますゾーリンゲン家の男爵閣下は、帝国の君主であらせられます皇帝陛下の御信任の厚い官吏として、宮城にて忠勤あそばれていられます』
{皇帝陛下としましても、忠実で優秀な寵臣を、御自身の身近から手放したくはないと思われますな。我が主}
『花さんの御父君であらせられますケルン家の伯爵閣下も、帝都憲兵隊の副総監という要職に就かれていられますから、長期間帝都を留守にされたのは、止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方に認められています慣習でもあります自力救済の権利を行使なされて、ルレアン家の子爵閣下が御治めになられていられました飛地の分領を、今は帝国騎士身分となられました甥の魔法使い様と共に焼き払われた時と。アンリ卿の御父君であらせられますレバークーゼン家の子爵閣下と御協力なされまして、ライン川沿いの領界問題の対処に当たられた時の二回だけになりますわね』
帝都にて手広く商売に成功なされていられます、品評会の審査委員長も務められました免状貴族身分の豪商を父親とされますヴェレーナさんによる話に、ナディーネさんは灰白色の髪の毛を揺らしながら頷かれまして。
『伯爵閣下の場合は、義兄であらせられるブランデンブルク家の侯爵閣下が、帝都憲兵隊の総監を務められているからな。事前に義理の兄弟同士で内々に調整を行えば、ある程度の期間は帝都を留守にする事が可能となるな』
{封建制度を政治体制に採用しております帝国におきましては、止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方による御身内の関係が、非常に重要なようですな。我が主}
『ナディーネさんの御父君であらせられます男爵閣下が御当主を務められていられますゾーリンゲン家も、先の男爵閣下であらせられました准将閣下が、帝国騎士身分のナディーネさんの兄君を一人伴われまして、ケーニヒスベルク家の辺境伯閣下が大将の軍階級にて指揮なされていられます、君主制が崩壊しましたザクセン公国方面の東方拡大戦争の前線基地に赴かれていられますから。ゾーリンゲン家の武門としての家名には、何一つ傷が付いてはいません』
私による見解に対しまして、ナディーネさんは頷かれて同意を示されますと。
『その通りだなフロリアーヌ。家は親父は官吏だが、爺さんと三人いる兄貴達が軍務省勤務だから、貴族諸侯の皆様方による社交界でも、武門の名門として扱ってもらえている』
{腕輪の主の兄君の中でも、長兄の勝者之民少佐は、特に武勇で知られている魔法使いですな。我が主}
ゾーリンゲン家は准将閣下と、男爵夫人様と、ニコラオス少佐を長兄とされましてナディーネさんを末子とされます四人の全員が、天から根元魔法の素質を授かりし選良でもあります、魔法使いと女魔法使いという家系ですからね。髪飾り。
『多分フロリアーヌの髪飾りと、ヴェレーナの首飾りも同じ内容を脳内会話の念話で話していると思うが。アタシの意志ある魔道具でもある腕輪が言うように、ゾーリンゲン家は魔法使いと女魔法使いが多い家族だから、他の止事無い身分であらせられる貴族諸侯の皆様方の家門よりは、恵まれた環境にあるからな』




