エピソード520 帝国の封建制度は社会的な流動性があります
『直接民主制を政治体制に採用しているシュヴァイツ共和国では、州民集会の議長や民会の取り纏め役は、年功序列で選ばれるのか。雑貨屋』
『ああ。その通りだルネ。若者の意見は、既得権益による利権の維持を最優先とする年寄りが中心となる州民集会や民会で否決されるからな。カールの御父君であらせられる男爵閣下や、自分の親父のように自らの才覚を頼りにする男は、帝国に移住する例が増えているな』
ツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様であらせられますカール卿と同じく、シュヴァイツ共和国から帝国に移住された移民二世でもありますクレーマーさんによる説明に。デュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息のルネ卿は、大きく頷かれますと。
『俺の親父は封建制度を政治体制に採用している帝国で、皇帝陛下に封土受領之誓いを奉り、止事無い身分であらせられる貴族諸侯の皆様方の一員に加わるのを宿願としているが。直接民主制を政治体制に採用しているシュヴァイツ共和国も、年功序列により年寄りが支配するという閉鎖的な社会なんだな…』
{ルネ卿は父親であるデュッセルドルフ家の上級の騎士殿に対して、子息として思う所があるようですが。帝国の封建制度とは異なる直接民主制を政治体制に採用しておりますシュヴァイツ共和国も、年功序列による老人問題を抱えていると再認識されたようですな。我が主}
異国を理想化して語る人物も世の中には居ますけれど、人間が生きる社会という共通点がある以上は、問題が無い政治体制などは存在しません。髪飾り。
『ザスキアのお父さんの帝国騎士様が生まれたザクセン公国は、帝国よりも身分制度が厳しい社会だったよね?』
仲の良い恵さんに尋ねられましたザスキア女史は、小刻みに首を縦に振られましてから。
コクッコクッコクッ。
「は、はい。ハンナ女史。ザクセン公国は帝国と比べましても身分制度が厳しい国でしたので、ケーニヒスベルク家の辺境伯閣下が大将の軍階級にて指揮なされる東方拡大戦争に際しましても、厳格な身分制度を軍場にも持ち込んだ為に、優秀な魔法使いの兵士は無能な上官の首を手土産に帝国軍に投降をしたそうです…」
{平時でしたら身分制度が厳格なザクセン公国の政治体制は、社会に安定を齎したのでしょうが。戦時には対応する事が出来ずに、帝国軍に敗れたようですな。我が主}
こうして移民二世や異なる身分の皆様方の話を聞きますと、天から根元魔法の素質を授かりし選良であります私には、十三歳までは地方部にて生まれ育ちました村娘であったとしましても、女魔法使いとしての立身出世の機会を与えて下される帝国の封建制度は、社会的な流動性があると改めて解ります。髪飾り。




