エピソード501 帝国語では無い本
『ザスキア女史も何か気になる本がありましたか?』
「は、はい。令嬢花女史。ザクセン公国の首都ドレスデンを中心とする地域で語り継がれて来ました、寓話集があります」
帝国とザクセン公国は基本的には同じ言語ではありますけれど、発音や言い回し等には違いがあるそうなので、通訳を介して意思疎通を図るそうです。
『御目が高いですザクセン公国の御姫様。そちらに置いてありますのは、帝国と槍之国以外の国々の門外不出の珍書になります♪』
「お、御姫様ではありません…」
{ケーニヒスベルク家の辺境伯閣下が、大将の軍階級にて指揮なされました東方拡大戦争に敗れまして、君主が叔父の外務卿を筆頭とされます廷臣を伴われて帝国に亡命されたのを解って言っているのなら、ザスキア女史に対する酷い皮肉ですな。我が主}
帝都に来たばかりで新聞を読んでいないのなら、ザクセン公国の君主が帝国に亡命された事実を知らない可能性もありますから、判断が難しいですね。髪飾り。
「こ、この寓話集を買わせてもらいます」
ザスキア女史がザクセン公国の首都ドレスデンを中心とする地域にて語り継がれて来ました寓話集を手に取られますと、下から帝国語では無い文字により題名が書かれた本が見えましたが…。
{どうかされましたか?。我が主}
「アンリ卿に希望さん」
声を潜めてアンリ卿とナディーネさんに呼び掛けますと、御二人が近付いて来られまして。
「どうかされましたか?。令嬢フロリアーヌ女史」
「何か危ない本でもあったか?。フロリアーヌ」
チラッ。
私が瑠璃之青の瞳による眼差しを本に向けますと、アンリ卿とナディーネさんも視線で追われましたが。
「帝国語でも無ければ、槍之国語でも無い本ですね?。令嬢フロリアーヌ女史」
帝国内では少数派となります、槍之国系の文化圏でありますレバークーゼン家の子爵閣下の御令息様であらせられます、アンリ卿の言葉に同意をしまして。
「何故題名が読めたのか私自身にも解らないのですけれど。北方半島王国の文字で死霊術入門と書かれています」
ピキッ。
{帝国では死霊術は禁呪ですからな。我が主}
止事無い身分であらせられます貴族諸侯の家門にて生まれ育たれました、アンリ卿とナディーネさんの表情が引き攣るのも当然です。髪飾り。
「どうする?」
ナディーネさんの問い掛けに対して、私とアンリ卿はザスキア女史から硬貨を受け取り笑顔にて商売をしています、シュヴァイツ共和国出身の店主の表情を観察しまして。
「本の内容を知らずに販売していたように見えます」
私の見解にアンリ卿が頷かれまして。
「はい。令嬢フロリアーヌ女史。知っていれば帝都の通りで堂々と禁呪の本を販売はしないと思われます」




