エピソード499 清清しい程に怪しい人物
『其処を行かれます高貴なる若人の皆様方、門外不出の珍書の数々を手に取られませんか♪』
間もなく帝都魔法学園の正門に着く直前に、夜の帝都では場違いに感じられます明るい声による呼び込みを受けました。
『門外不出の珍書ですか?』
荷車式の屋台の書店の前で、奇妙な程に明るい笑顔を浮かべる男性は、大袈裟に御辞儀を行われまして。
『はい。高貴なる御嬢様。大陸の各国を渡り歩きながら蒐集をしました、門外不出の珍書の数々が揃っております♪』
{怪しいという以外の感想が何一つ思い浮かびませんな。我が主}
完全に同意をしますけれど、ここまで徹底して怪しいと、逆に清清しいと感じます。髪飾り。
『槍之国語で題名が書かれている本もあります』
レバークーゼン家の子爵閣下の御令息様であらせられますアンリ卿が、魔道具の街灯の明かりの下にあります荷車式の屋台の書店に並べてあります本の題名を確認されますと。
『はい。高貴なる貴族之若旦那。仰せの通りで御座います♪』
こちらの荷車式の屋台の書店の店主は、帝国之住民ではありませんね。貴族之若旦那という表現は、止事無い身分であらせられます貴族諸侯の家門に生まれた殿方の事を、平民身分の男性が愚弄する際に用いる事が多い言い回しです。
{西方の大国でもあります、槍之国の出身かも知れませんな?。我が主}
『槍之国から、商売で帝国に来られたのですか?』
貴族之若旦那呼ばわりされたアンリ卿は、異国人の言い間違いを指摘するつもりは無いようですので、私も荷車式の屋台の書店に並べてあります本の題名に目を通しながら尋ねますと。
『生まれ故郷はシュヴァイツ共和国となります。高貴なる御嬢様♪』
シュヴァイツ共和国ですか。直接民主制を政治体制に採用しています、カール卿の御父君であらせられますツヴィングリ男爵閣下が生まれた国でもありますね。
『帝国語でも無ければ、槍之国語でも無い題名の本もあるな?』
デュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息でもありますルネ卿が、アンリ卿の横に並ばれて話されますと。
『えっ。ルネって、槍之国語読めるのっ!』
恵さんが衝撃を受けた表情にて言われますと、ルネ卿は苦笑を浮かべて。
『レバークーゼン家とデュッセルドルフ家は、帝国では少数派となる槍之国系の文化圏に属しているからな。こう見えても親父から槍之国語を叩き込まれている』




