エピソード484 帝国においては廃れつつあります騎士道精神
『談話室にはザスキア女史も居られましたから、アンリ卿と希望さんは帝国騎士身分であらせられます勝者之民少佐が、ザクセン公国との東方拡大戦争において挙げられました具体的な戦果は話されませんでしたけれど、花さんは御存知かしら?』
談話室での話を終えましてから、学生寮の女子寮にあります真実さんの部屋に来ていますけれど。今宵は寝台の上に並んで腰掛けながら、二人きりでの会話を心から楽しんでいます。
『不勉強で申し訳ありませんヴェレーナさん。ゾーリンゲン家の男爵閣下の長男であらせられますニコラオス少佐の御名前さえ、私は今宵始めて知りました』
正直に答えました私に対して、並んで腰掛けていられますヴェレーナさんは優しく微笑まれまして。
『御気にされる必要はありませんわフロリアーヌさん♪。ニコラオス少佐の戦果が新聞で報道されましたのは、私達が帝都魔法学園に入学する以前の事でしたから』
{我が主が帝国の地方部で暮らされていた時分に、腕輪の主の兄君は東方拡大戦争において武功を挙げられた訳ですな}
当時の私は地方部で暮らす平民身分の村娘に過ぎませんでしたから、帝国騎士身分の御代官様が話題にされなければ、東方拡大戦争の情報に関しては知る術がありませんでした。髪飾り。
『止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方による、自力救済の慣習が認められています帝国においては、騎士道精神が徐々に廃れつつありますけれど。ニコラオス少佐…当時は尉官の大尉でしたけれど。ザクセン公国で最強と呼び慣わされました魔法使いと一騎討ちをされまして、見事に首級を挙げられましたわ』
一騎討ちという言葉自体が、帝国とはエルザス伯国とロートリンゲン公国を挟んで西方に位置をします槍之国を由来とする表現になりますけれど。ニコラオス少佐は槍之国の騎士道精神に則られまして、ザクセン公国最強の魔法使いを討ち取られたのですね。
『ケーニヒスベルク家の辺境伯閣下が大将の軍階級にて指揮なされていられます、東方拡大戦争に従軍なされていられます帝国軍の将兵の皆様方は、ニコラオス少佐が一騎討ちに勝利された事により、大いに士気が高揚されたと思われます。ヴェレーナさん』
帝国は根元魔法が盛んな国ですので、敵国の最強の魔法使いを討ち取るだけでも士気は向上しますけれど。廃れつつあるとはいえ騎士道精神に則り行われた一騎討ちに味方が勝利したのですから、前線の帝国軍人の皆様方はニコラオス少佐に対して熱狂的な讃辞を送られたのは疑いの余地がありません。




