エピソード40 出品目録
『こちらが本日の競売会に出品される品々の目録となります』
『解りましたわ♪』
競売会の係員の方に案内して頂けたのは、会場の二階にあるボックス席でした。
『御用向きがありましたら、備え付けられております紐を引いて御呼び下さい』
ボックス席に吊されている一本の紐は何に使うのかと思いましたが、引くと係員の方が来て下されるようです。
『助かりましたわ♪』
免状貴族身分の真実さんが、案内して下された係員の方に心付けを渡されますと、完璧な所作にて恭しく深々と御辞儀をされまして。
『有難う御座います。それでは失礼をいたします』
案内役の係員の方がボックス席から下がられますと、希望さんが少しの間待たれましてから。
「行ったな?」
仮面を被られたまま私に対して、藍色の瞳を向けて小声にて確認されましたので。私も周囲の気配を探りましてから。
「はい。私達三人以外の気配は感じ取れません」
私による返答を聞かれたナディーネさんは、小さく溜息を吐かれまして。
「フウッ…。爺さんが手を回して二階のボックス席を確保してくれて助かったぜ。一階で見ず知らずの止事無い身分の皆様方に囲まれながら競売会に参加したら」
ここでナディーネさんは、ヴェレーナさんに藍色の視線を向けられまして。
「堂に入ってるヴェレーナはともかく、アタシは絶対に化けの皮が剥げるからな」
免状貴族身分のヴェレーナさんと、平民身分の私とは異なりまして、ナディーネさんは帝国の貴族諸侯であらせられる男爵閣下の御息女の令嬢なのですが。こうした競売会に関しては、商家で生まれ育たれたヴェレーナさんの方が手慣れていられるのは確かです。
「私は何故呼ばれたのでしょうか?」
ナディーネさんとヴェレーナさんの二人が居れば、私は不要ではないかと思いまして疑問を口にしますと。
「競売会に出品される品々の目録を見ますと、かなり強力な魔道具もあるようですから。私達三人の中で魔力が一番強い女魔法使いである花さんは、必ず役立ちますわ♪」
仮面を被られているので表情は見えませんが、楽し気に話されたヴェレーナさんが、緑青色の瞳で目を通されている目録を、私も瑠璃之青の瞳で眺めまして。
「…遺失魔道具が出品されていませんか?」
私の確認に対してナディーネさんも、藍色の瞳で目録に目を通されましてから。
「フロリアーヌの言う通りだな。競売会に参加している他の連中は、自分達が何を競るか危険性が解ってんのか?」
私達の故国である帝国では、国の中枢である首都に帝都魔法学園がある事からも解るように、根元魔法が非常に盛んな国ですが。
「遺失魔道具は製造方法が解らない魔道具です。特に強力で危険な遺失魔道具は、自らの意志を持つ意志ある魔道具ですが…」
ナディーネさんと私が不安気に話しますと、ヴェレーナさんは楽しんでいられる口調にて。
「意志ある魔道具は自らの意志により所有者を選びますから、どのような趣向を競売会が用意されているのか、非常に楽しみですわね♪」
…ヴェレーナさんはある意味で、私よりも天から根元魔法の素質を授かりし女魔法使いらしい人物です。
「まあ、いいさ。アタシ達は爺さんからの依頼通りに、横流しされた魔道具を預かった予算内で競り落とすのが目的だからな」
ナディーネさんの仰られる通りです。競売会に出品されているか遺失魔道具に関しては、私達三人は直接関わる必要はありません。




