エピソード36 帝国軍と魔道具
『希望は幼馴染みの恵ちゃん以外には、同年輩の女子の友人がおらぬから。お嬢さん方が儂の可愛い孫娘と仲良くしてくれて、祖父として心より嬉しく思っている♪』
帝都の貴族街にある男爵閣下の上屋敷の応接間にて、豪放磊落に破顔なされていられる御自身の御爺様に対して、ナディーネさんが灰白色の髪の毛を左右に揺らしながら。
『…勘弁してくれよ爺さん。真実と花の二人を連れて来いってアタシに言伝を寄こしたのは、軍務省関係の依頼があるからなんだろ?』
ナディーネさん御爺様は、御令息であらせられる男爵閣下に、家督と御領地を譲られた後も。帝国の君主であらせられる皇帝陛下の軍隊である帝国軍を管轄する軍務省にて、将官の准将閣下の軍階級にて働かれていられます。
『儂の可愛い孫娘は、幼い頃から生真面目であるな♪』
『帰っていいみたいだな』
楽し気に笑顔で話された御爺様を、孫娘のナディーネさんが藍色の瞳で冷ややかに見詰めますと。准将閣下は笑われながら御頷きになられまして。
『仕事の話しに入る前に軽い世間話をするのも、貴族諸侯の社交界では必須とされる能力なのだが。本題に入るとしよう』
そう仰せになられますと准将閣下は、孫娘のナディーネさんと同じ藍色の瞳による視線を私に向けられまして。
『お嬢さんが帝都魔法学園の治癒魔法の実習講義の際に、刑場で根元魔法の衝撃波で吹き飛ばし気絶させた不逞の輩だが。帝国軍が偵察隊に貸与している、姿隠之魔法の根元魔法を付与されている魔道具を所持していた』
成る程。
『横流しか?。爺さん』
孫娘であるナディーネさんの確認に対して、准将閣下は御頷きになられまして。
『そのようだ。偵察隊は任務の性格上、貸与している魔道具を紛失する事もあるので、不正に手を染める者も出て来る』
私のように天から根元魔法の素質を授かりし女魔法使いや、准将閣下のような魔法使いは少数派ですので、帝国軍に所属をする将兵の大多数は一般人となります。空を飛ぶ飛翔や、不可視となる姿隠之魔法の根元魔法を付与されている魔道具は、最前線では必要不可欠となっています。




