エピソード31 地下施設の門
『ヴヴンッ。ヴヴンッ。ヴヴンッ。ヴヴンッ』
『この音を聞くと安心をします』
召喚魔法の講義を受講する為に、帝都魔法学園の地下にある部屋まで階段を降りて来ましたが。唯一の出入口には、通過したのが人間かどうか識別する為の根元魔法が付与されている門があります。
『少なくともアタシ達の中には、上位魔神の鏡像魔神が化けて紛れ込んではいないと証明されるからな。花』
帝国の貴族諸侯であらせられる、男爵閣下の御息女でもある令嬢の希望さんの言葉に対して、私は帝都に来て以来伸ばしている金髪を揺らしながら頷きますと。瑠璃之青の瞳にて門を眺めまして。
『私は帝国の地方部出身ですので、このような門を通過した存在が人間かどうかを識別する根元魔法が付与されている魔道具は、帝都に来るまで実物を見た事がありませんでした』
私のように天から根元魔法の素質を授かりし女魔法使いならば、身に纏う魔力の量により、根元魔法を扱える魔法使いや女魔法使いであるかは識別可能ですが。魔界の住民でもある上位魔神の鏡像魔神などが人間に化けている場合は、確実に見破れる自信はありません。
『万ヶ一魔界の住民が門を通過したら、周囲のゴーレムやガーゴイルが動き出して、袋叩きにするんだよね?』
恵さんが赤茶色の短いツインテールを揺らしながら、帝都魔法学園の地下に設置されているゴーレムとガーゴイルの様子を、不安気な様子にて薄茶色の瞳で見回しながら話されますと。
『ゴーレムやガーゴイルは、与えられた命令には絶対服従するから、こうした施設の監視には最適だからな』
ハンナさんの幼馴染みでもあるナディーネさんも、灰白色の髪の毛を僅かに揺らされながら、藍色の瞳にて、周囲に設置されているゴーレムとガーゴイルを眺めながら仰られました。
『帝国の君主であらせられる皇帝陛下の都でもある帝都に、万ヶ一にでも魔界の住民を解き放つ訳にはいきませんわね』
銀白色の髪の毛と、緑青色の瞳をされている真実さんも、ハンナさんやナディーネさんと同様に、周囲に設置されているゴーレムとガーゴイルの様子を観察しながら話されました。
『まあ、ゴーレムやガーゴイルは与えられた命令には絶対服従するが、柔軟性が全く無いからな。その点人間の方は状況の変化に対して臨機応変に対応が出来るから、爺さんや親父も、人間の部下や家臣を大切にしている訳だな』
ナディーネさんの説明に、私は納得して頷きまして。
『適材適所が重要という事ですね。ナディーネさん』
御爺様と兄君が職業軍人という家庭環境で生まれ育たれたナディーネさんは、私に対して不敵な笑みを見せられますと。
『貴族諸侯であらせられる皆様方の家門の中には、固定費でもある人件費を削減する為に、家臣団の人員整理を行う当主が時々現れると、宮城で宮仕えをしている親父が話していたが。そうした家門は結局は、領地を護る為に傭兵を雇うのに多額の資金を必要とするようになるから、経費削減を目的とした家臣団の召し放ちは、短期的には財政の健全化には役立っているように見えても、長期的には弱体化に繋がるからな』
やはり封建制度を政治体制に採用している帝国において、御領地と領民を護る義務を負われている貴族諸侯であらせられる男爵家の家門で生まれ育たれたナディーネさんからは、地方部出身の平民身分の私は多くを学ぶ事が出来ます。
『教えて頂きまして、ありがとうございますナディーネさん』
心底よりの感謝の気持ちを込めてお礼の言葉を述べますと、ナディーネさんは灰白色の髪の毛を上品に揺らされまして。
『フロリアーヌのそうした素直な態度を、爺さんや親父やお袋は気に入っているぜ』




