エピソード29 談話室
『女子寮での寄宿生活は気に入っているが、学生寮の個室は狭いから、三人で集まり話すのが難しいからな』
『希望さんの仰られる通りですね』
学生食堂での昼餉を摂り終えましてから、私とナディーネさんと真実さんの同い年の女子学生の三人で、談話室に移動をして室内の一番隅にて話しをしています。
『学生食堂では花さんとアンリ卿が話しをしていますと、周囲からの注目を浴びますものね♪』
帝都にて手広く商売をされています、免状貴族身分の豪商の家に生まれました、銀白色の髪の毛と緑青色の瞳をされているヴェレーナさんが、笑顔の下に毒を秘めながら仰られましたので。
『何度否定をしましても、私の事を貴族諸侯であらせられる皆様方の隠し子だという疑いを、持ち続ける人達が居ますので』
封建制度を政治体制に採用している帝国では、侯爵閣下以上の爵位の貴族諸侯であらせられる皆様方を、上級貴族の家格としますが。
『フロリアーヌは金髪と瑠璃之青の瞳という、上級貴族の家格で多く見られる容姿をしているからな』
男爵家の御息女であらせられる令嬢として生まれたナディーネさんは、藍色の瞳と灰白色の髪の毛をされていますが。気風の良い話し方とは裏腹に、談話室の椅子に腰掛ける姿勢は、地方部出身の平民身分の私から見ましても、非常に美しいと感じます。
『私の所作を見れば、平民身分の退役軍人でもある祖父に地方部で育てられたと、直ぐに解りそうなものだと思うのですが?』
心の底からから不思議に思いながら話しますと、ナディーネさんとヴェレーナさんは、お互いの藍色と緑青色の瞳による視線を、空中にて交差させますと。
『フロリアーヌが退役軍人の爺さんから、どういう躾をされて育ったのか、正確な所は知らねえが。職業軍人の爺さんや兄貴達に囲まれて育ったアタシよりは、令嬢や淑女のように感じるからな』
『フロリアーヌさんは素敵な女性ですから♪』
ナディーネさんとヴェレーナさんの感想を聞いた私は苦笑を浮かべますと、帝都魔法学園に入学して以降は伸ばしている金髪を、軽く揺らしながら首を振りまして。
『それでナディーネさん。ヴェレーナさんと私に対する話しは何でしょうか?』
私の出自に関する話題はここまでとして、本題に入ってほしいと水を向けますと。
『そうだな。今日の放課後は、二人は時間が空いてるか?』
詳しい内容は、帝都魔法学園の談話室では話せないという事ですね。
『私は大丈夫ですね』
ナディーネさんに対して、放課後に予定は入っていないと答えます。ヴェレーナさんも銀白色の髪の毛を揺らしながら頷かれまして。
『私もフロリアーヌさんと同様に、放課後に予定は入ってはいませんわ。ナディーネさん』
私とヴェレーナさんによる返答を聞かれたナディーネさんは、真剣な表情を浮かべられまして。
『それなら時間を開けといてくれ。用事がある』
ナディーネさんの私用では無く、先の男爵閣下であらせられる、職業軍人の御爺様関連のようですね。
『はい。解りましたナディーネさん』
『私も承知しましたわ。ナディーネさん』
私達から了解したとの返答を聞いたナディーネさんは。
『悪いな二人とも』
『お気になさらずに。ナディーネさん』




