エピソード26 卒業後の進路選択
『帝都魔法学園で根元魔法を学ばれていられる、二年生の皆さんは既に承知されていますが、ミスリル銀製の魔道具は帝国においては非常に重要な存在です』
帝国女騎士身分の老女教授が引率なされた、治癒魔法の実習講義が行われました翌日となる本日は、壮年期の魔法使いでもある教授による、魔道具に関する講義を受講しています。
『帝都の街路を夜間に明るく照らす街灯は、大気中の魔力を吸収して光を放っていますが。他にも上下水道網には欠かせない浄水設備も魔道具ですので。私達が帝都にて便利で快適な生活を送れているのは、魔道具の存在が極めて大きいです』
教授の仰られる通りです。私は退役軍人でもある魔法使いの祖父から、根元魔法の基礎を学んだ孫娘でもある女魔法使いですけれど。水汲みや薪割りは、天から根元魔法の素質を授からなかった他の家族と同様に、自らの身体を動かして行っていましたから。蛇口を開ければ水が出る帝都の水道を初めて目の当たりにした時の衝撃は、一年以上が経過をした今でも昨日の事のように鮮明に思い出せます。
『帝都魔法学園を卒業された卒業生の半数以上は、帝都にある職人街の工房に弟子入りをして、親方の下で魔道具製造の腕を磨いて生涯の仕事とされています』
天から根元魔法の素質を授かりし魔法使いでも、祖父のように帝国軍に入隊をされて、三十年間勤め上げられまして、退役軍人として軍人恩給を受給される人物は少数派となります。
『次に多いのが、治癒魔法の能力を活用されて医者や女医となる人達ですが。こちらの場合でも自らの診療所を開設するには、経験豊富な先達に弟子入りをされまして、見習いとして知識と技術を身に付ける必要があります』
天から根元魔法の素質を授からなかった一般人からしますと、私達のような女魔法使いと魔法使いは、得体の知れない根元魔法を扱う怪物のように見える事もありますが。私達が居なければ、彼ら一般人は非常に不便な生活を送らなければいけなくなります。
『帝国の君主であらせられる皇帝陛下の軍隊でもある帝国軍にも、魔法使いと女魔法使いは入隊して軍場にて活躍されています。私の両親の世代から女魔法使いであれば帝国軍は女性の入隊も認めるようになりましたから、卒業後の進路選択の一つとして、男女の性別を問わずに帝国軍に入隊をする道もあります』
やはり能力主義を重んじる軍隊組織である帝国軍を中心に、封建制度を政治体制に採用している帝国でも、性別や身分による制約は、世代交代が進むに連れて緩和されています。




