エピソード200 ヴェレーナさんによる非常に冷ややかな眼差し
『花さんの綺麗に伸ばされた金髪に、髪飾りは非常にお似合いですけれど。ミスリル銀製の耳飾りである夜之祝福を組み合わせますと、一層美しさが引き立ちますわね♪』
『有難う御座います。真実さん』
{首飾りの主は、本当に我が主を御気に召されていられますな♪}
『私はいま髪飾りと、脳内会話である念話をしています。ヴェレーナさん』
私としては髪の毛は短い方が、公衆浴場での湯浴みを終えた後に早く乾いて、髪型を整えるのが楽なのですけれどね。髪飾り。
『公衆浴場での湯浴みを終えました後に、こうして夜の帝都をフロリアーヌさんのような絶世の美女と共に歩けるのは、望外の幸いですわね♪』
ヴェレーナさんは時折私に関しては、大袈裟な表現をされます。
{首飾りの主は、本気で仰られているように思えますが?。我が主}
『ば、婆や。助けてっ!』
『ああっ、御嬢様っ!。お、御願いをします。御嬢様を御助け下さいっ』
うん。何でしょうか?。
『下がっていなさい』
『衛兵隊の隊員の皆様方のようですわね?』
ヴェレーナさんが緑青色の瞳の視線を向けた先では、帝都の治安維持機関の一つである衛兵隊の制服を着用されている人達が、男性と少女を取り囲まれていました。
『ち、近付くな。近付いたらこの女の子を殺すぞっ!』
『やだーーっ。婆や助けてっ!』
ふむ。男性の顔には見覚えがあります。衛兵隊と財務警察の人相書きにありました、奴隷市場から逃げ出した逃亡奴隷の一体ですね。
『そんな幼い少女を人質にして、男として恥ずかしくはないのかっ!』
『人質には私がなります。御嬢様を解放して下さいっ!』
成る程。衛兵隊が逃亡奴隷の一体を発見しましたが、お付きのいる良家の少女を人質にしたようですね。
『…フロリアーヌさん。魔力を強化する効果のあります、夜之祝福を貸しては頂けませんか?』
『御断りします。ヴェレーナさん』
夜之祝福を貸して欲しいと話したヴェレーナさんの願いを拒絶しますと、非常に冷ややかな眼差しにて私を御覧になられまして。
『何故かしら?。フロリアーヌさん』
私は帝都魔法学園に入学して以来、一年以上に渡り御世話になっていますヴェレーナさんによる、冷ややかな眼差しを正面から受け止めますと。
『今のヴェレーナさんは、幼い頃に身代金目的の誘拐未遂に遭い、乳母が命を落とされた時の光景が脳内に蘇り、冷静さを欠いていられます。私が夜之祝福を貸しましたら、即死魔法である死之舞踏を、逃亡奴隷に向けて放つつもりであると予想をします』
『だとしましたら、何か問題があるかしら?。フロリアーヌさん』
『自分自身の身を守る為の正当防衛でしたら、逃亡奴隷に対して即死魔法である死之舞踏を撃っても問題はありません。しかし衛兵隊の隊員の皆様方が取り囲まれている状態で離れた場所から根元魔法を放ち命を奪うのは正当化が出来ません』
『………フロリアーヌさんの仰られる通りですわね。頭に血が上り逆上して冷静さを欠いていましたわ。お礼を申し上げますわね』
普段のヴェレーナさんに戻られたようですね。




