エピソード197 身体に流れる血統
『良い人からの贈り物かと思いましたが、ヴュルテンベルク家の城伯閣下が上屋敷にて開催された晩餐会で拝領をされました、魔道具の耳飾りだったのですね。花女史♪』
『はい。カール卿。城伯閣下には心底より感謝申し上げております』
カール卿と私と給仕の女性の三人で、飲食店内で話をしていますけれど。給仕の女性が以前は着けていなかったミスリル銀製の魔道具である耳飾りに関して尋ねたので答えますと、カール卿は満面の笑みを御浮かべになられました。
『カール卿の姉君であらせられます令嬢は、城伯閣下の跡継ぎであらせられます帝国騎士様の婚約者ですから、帝都にて御会いされる事もあるのですか?』
図書館と飲食店で、私が着けている耳飾りである夜之祝福に関して一切尋ねられませんでしたカール卿は御頷きになられますと。
『はい。フロリアーヌ女史。城伯閣下は根元魔法至上主義者な御方ではありますが、優れた魔法使いである父上の息子の私は一般人でも、次の世代の子供は魔法使いか女魔法使いが隔世遺伝で生まれる可能性があると御考えになられていられます』
カール卿の御父君であらせられますツヴィングリ男爵閣下は、異国出身の平民身分から一代にて止事無い身分であらせられます貴族諸侯の男爵の爵位を得られた立志伝中の御方ですので。御嫡男様であらせられますカール卿御自身は天から根元魔法の素質を授からなかった一般人でしても、身体には非常に優れた魔法使いの血が流れていられます。
『フロリアーヌ女史も、退役軍人の御爺様が魔法使いな、隔世遺伝をされた孫娘の女魔法使いでしたね?』
カール卿からしますと、私に対しては遊び相手という他にも、祖父から血統により根元魔法の素質を隔世遺伝した孫娘の女魔法使いであるという点も、関心を抱く理由となっているようです。
『はい。カール卿。私の祖父は魔法使いですが、両親と兄弟姉妹は一般人です』
私の説明を聞いた、飲食店内の給仕の女性が頷かれまして。
『止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方が、愛妾を作り子を数多く儲けられる御方が多いのは、魔法使いの御令息様と女魔法使いの令嬢や淑女を欲されてなのですね』
レバークーゼン家の子爵閣下の御令息様であらせられますアンリ卿という例もありますから、給仕の女性による見解は間違っているとは言えません。
『父上は愛妻家ですので愛妾は居ませんが、代わりに家督と財産の相続権を有しない猶子として、帝国自由都市リューベックにあります叡智学園にて根元魔法を学ばれていられます帝国騎士様を、私の義兄としてツヴィングリ男爵家の家族の一員として迎え入れられました』
{封建制度を政治体制に採用している帝国では、止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方は、養子や養女を迎えますと、後で御家騒動に発展する恐れがありますが、家督と財産の相続権を有しない猶子でしたら、そうした心配をせずに済みますな。我が主}