エピソード193 ここまで導いて下された御方
『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』
『帝都の貴族街にありますヴュルテンベルク家の城伯閣下の上屋敷にて、昨夜開催されました晩餐会の席では、ザスキア女史は私の事を心配して頂けたと恵さんからお伺いをしました。御礼を申し上げます』
「も、勿体ない御言葉で御座います。花女史…」
翌朝。帝都魔法学園の学生食堂にて、最近は一緒に朝餉を摂る事が多い、アンリ卿と希望さんとザスキア女史と真実さんと私とハンナさんの六人で食事をしていますが。ザスキア女史は上目遣いに私の様子を御覧になられますと。
「フ、フロリアーヌ女史は、ミスリル銀製の魔道具の耳飾りが本当に御似合いです」
ザスキア女史による感想に対して私は、髪飾りを着けている金髪を揺らしながら頭を下げまして。
『ザスキア女史が以前に古物市にて購入されました、魔道具である香水の瓶の効果を事前に試していましたので、同様の効果を着用時は得られる夜之祝福を安心して選ぶ事が出来ました。心底よりの御礼を改めて申し上げます。ザスキア女史』
嘘偽りの一切無い本心からの私による感謝の言葉を聞いたザスキア女史は、身体を小刻みに痙攣するかのように震わせながら、首を横に振られまして。
プルップルップルッ
「き、恐悦至極に存じ上げます。フロリアーヌ女史…」
学生食堂にて共に朝餉を摂られている他の皆様方は、ザスキア女史と私による遣り取りを、暖かな眼差しにて御覧になられながら。
『フロリアーヌ女史は、今後はヴュルテンベルク家の城伯閣下から拝領されました耳飾りである、夜之祝福を常に身に着けられるのですか?』
ヴュルテンベルク家の城伯閣下とは同格の爵位であらせられます、レバークーゼン家の子爵閣下を御父君とされます庶子のアンリ卿による確認に対して。
『はい。アンリ卿。夜之祝福を常に身に着けておけば、一撃必殺の根元魔法である、原子核崩壊をいつまで発動可能となりますから』
私の返答を聞かれました、ゾーリンゲン家の男爵閣下の御息女にして、令嬢なナディーネさんが笑われながら。
『家も軍人一家だが、退役軍人の祖父に育てられたフロリアーヌも、武人寄りな女魔法使いの考え方をするな♪』
笑いながら気風の良い口調にて話されたナディーネさんによる感想を聞かれましたヴェレーナさんも、楽し気な笑みを見せられまして。
『帝国の君主であらせられます皇帝陛下の直臣の臣下である帝国女騎士身分を私達は目指していますから、フロリアーヌさんの常在戦場の心構えは見習うべきですわね♪』
{首飾りの主は、我が主と共に帝国女騎士身分となるのに非常に強い執着を見せられていますな}
『今アタシは腕輪と念話をしている』
『今私は首飾りと念話をしていますわ』
『今私は髪飾りと念話をしています』
ヴェレーナさんは地方部出身の平民身分の村娘に過ぎない私を、ここまで導いて下された御方ですから。髪飾り。