エピソード191 私達三人以外にも
『カラッカラッカラッ』
『令嬢が仰られていられましたけれど、ミスリル銀製の魔道具の耳飾りである夜之祝福が、とてもお似合いですわ。花さん♪』
『有難う御座います。真実さん』
帝都の貴族街にあります、ヴュルテンベルク家の城伯閣下の上屋敷にて開催されました。天から根元魔法の素質を授かりし選良である、魔法使いと女魔法使いの親睦を深めるのを目的とした晩餐会が恙無く終わりましたので。希望さんの御父君であらせられますゾーリンゲン家の男爵閣下に仕える、使用人の御者が運転する馬車に乗り帰途についています。
『城伯閣下と令嬢と御話をさせて頂く際の私の振る舞いには、無礼な点はなかったでしょうか?』
私の問いに対して四人掛けの馬車の席の向かい側に腰掛けられていられますナディーネさんが、灰白色の髪の毛を揺らしながら軽く首を横に振られまして。
『心配する必要は無ぇなフロリアーヌ。アタシよりもよっぽど止事無い身分であらせられる皆様方の家門に生まれた、令嬢や淑女に見えたぜ♪』
ナディーネさんが笑いながら気風の良い口調にて話されますと、隣に座られている恵さんも笑われながら。
『ザスキアも最初は物凄い心配そうな表情でフロリアーヌを見ていたけれど、フロリアーヌの立居振舞に魅了されたような、陶然とした眼差しを向けていたよね♪』
ナディーネさんが大切な幼馴染みとされますハンナさんは、本当に周りを良く見ていられて細やかな気遣いの出来る人物だと感心をしますが…。
{魔道具の耳飾りである、夜之祝福による魅了効果も加味された周囲の反応であると考える必要がありますな。我が主}
その通りです。それと、ケルン家の伯爵閣下の時は貴方は沈黙していましたけれど、ヴュルテンベルク家の城伯閣下の御前では、脳内会話である念話を普通にしていましたね?。髪飾り。
『ナディーネ。ヴェレーナ。フロリアーヌ。腕輪と首飾りと髪飾りと脳内会話の念話をしていると、馬車の中が沈黙に支配されるんだけれど?』
『あ、ああ…。悪ぃな。ハンナ』
『申し訳ありません。ハンナさん』
『ハンナさんからの指摘を受ける度に、人前での念話は控えようと思うのですが、我ヶ半身のように髪飾りはなって来ています。ハンナさん』
ナディーネさんとヴェレーナさんと私の他にも、耳飾りの主であるケルン家の令嬢も、同様なのかも知れません?。