エピソード19 脱衣所での女子学生の四人
『真実さんに勧められて、帝都に来て以降は髪の毛を伸ばしているのですけれど、湯上がり後に乾かして梳かすのに時間が掛かりますから。故郷で暮らしていた頃のような、短い髪型に戻しても良いでしょうか?』
公衆浴場の大浴場で湯浴みを済ませた私が、脱衣所に設置されている鏡の前の椅子に腰掛けて、金髪を櫛で梳かしながら話し掛けますと。右隣の椅子に腰掛けて、銀白色の髪の毛に丁寧に櫛を通して梳かされているヴェレーナさんが、笑顔を浮かべながら。
『商家に生まれた私として、そのような勿体ない行いは看過する事が出来ませんわね。花さん♪』
…ヴェレーナさんは笑顔ですが、鏡に写る緑青色の瞳は笑っていないので、これ以上は言わない事にしました。
『帝都魔法学園の入学式の日に、フロリアーヌは身に纏っている強大な魔力に加えて、上級貴族の家門の令嬢に多く見られる金髪と瑠璃之青の瞳をしているから、入学初日から目立っていやがったからな』
左隣の椅子に腰掛けていられる、灰白色の髪の毛と藍色の瞳をされている希望さんは。平民身分の私とは異なり、帝国の貴族諸侯であらせられる男爵閣下の御息女でもある、本物の令嬢なのですが。
『新入生の皆であれ誰って小声で話していたよね。フロリアーヌが平民身分だと知っても、今でも一部の学生は、上級貴族の皆様方の隠し子じゃないかと、疑っているみたいだよね』
幼馴染みでもあるナディーネさんの左隣に腰掛けていられる、赤茶色の短いツインテールと薄茶色の瞳をされている恵さんの話を聞いた私は、正面の鏡に向けて溜息を吐きまして。
『私は正真正銘の平民身分の村娘です。祖父が退役軍人なので、戦友でした帝国女騎士様からは、優れた魔法使いとして帝国軍にて活躍なされた祖父の孫娘でもある女魔法使いならば、他の学生よりも根元魔法に秀でていて当然だと認識されていますけれど』
同い年の十四歳の女子学生でもある、ヴェレーナさんとナディーネさんとハンナさんしか近くに居ないので、内心の不満を正直に話しますと。
『同じ平民身分でも、フロリアーヌのように気苦労が多い人もいるんだね』
ハンナさんの言葉に対して。ナディーネさんが笑いながら。
『ハンナのようなお子様には無縁な悩みだな♪』
『ちょっと。それどういう意味よっ。ナディーネっ!』
幼馴染みのナディーネさんとハンナさんが仲良くされている間に、私とヴェレーナさんは髪の毛の手入れを仕上げました。