エピソード189 揃って楽し気な笑みを見せられました
『当家が蒐集した魔道具ですが、令嬢と花女史の順番で、一つ好きなのを選ばれるように』
ヴュルテンベルク家の城伯閣下の御言葉に対して、ケルン家の伯爵閣下の御息女であらせられます令嬢と私は、揃って恭しく深々と御辞儀を行いまして。
『『心底よりの御礼を申し上げます。城伯閣下』』
「本当に良く似ていられますわね」
「御母堂様は異なる異腹の姉妹ですわよね?」
「双子の姉妹という訳ではないとは思いますけれど?」
ふうむ?。令嬢と私はそんなに似ているのでしょうか…。
『それでは選ばせて頂きますわね。城伯閣下』
令嬢の御言葉に対して、城伯閣下は笑顔にて御頷きになられまして。
『はい。ご自由に選ばれますように。令嬢♪』
魔法使いと女魔法使いの親睦を深めるのを目的とされる晩餐会にて、食事の後の余興として行われた賭博遊戯の抽選に当たりました報酬が、賞金では無く自ら選ぶ魔道具な点は。根元魔法至上主義者であらせられます、ヴュルテンベルク家の城伯閣下らしいとも感じます。
『この魔道具の指輪は、装着者の心身の危害を加える恐れのある魔法を術者に対して反射をする、鏡之指輪ですわね。これを頂戴しますわ。城伯閣下♪』
令嬢の選択に対して、城伯閣下は満足気な笑みにて御頷きになられまして。
『お目が高いですな。令嬢♪』
{耳飾りの主が選ばれましたのは、鏡之指輪ですが。我が主は何を選ばれますかな?}
そうですね?。止事無い身分であらせられます、貴族諸侯のケルン家の伯爵閣下の御息女の令嬢は、御自身の身の安全を最優先される魔道具である、鏡之指輪を選ばれましたが。私は地方部出身の平民身分の村娘に過ぎませんから…。
『こちらの一対の耳飾りを頂戴したく思います。城伯閣下』
『ほう。何故だか理由を聞いてもよいかな?。フロリアーヌ女史』
左右の耳に装着するミスリル銀製の魔道具である一対の耳飾りを手に取り選んだ私に対して、城伯閣下が興味深そうな表情を御浮かべになられて御下問されましたので。私は再び恭しく深々と御辞儀をしてから、奉答を行いました。
『一時的に魔力を強化する効果のある香水を使いますと、根元魔法の原子核崩壊を発動する事が可能なのですが。こちらの一対のミスリル銀製の耳飾りは、身に着けている間は同様の効果を装着者に与えますので。いつでも原子核崩壊が発動可能となります。城伯閣下』
ニイッ。
私による奉答を聞かれた城伯閣下と、それと令嬢もですが。揃って楽し気な笑みを見せられました?。
『フロリアーヌ女史は、将来有望な女魔法使いですな。令嬢♪』
『はい。城伯閣下の仰せの通りですわね♪』
何故だか理由は解りませんが、私の選択を城伯閣下と令嬢は御気に召されたようです?。