エピソード183 手入れが行き届いている肌理細かい柔肌な掌の持ち主
シュルッ。
『誰だか解るかしら?』
ピクッ。『えっ。誰?』
ふむ?。背後からどなたかが私の両目を、柔らかい手入れが行き届いている掌にて塞がれましたが。真実さんは一瞬ピクリと反応されただけで何も仰られず、恵さんは誰だか解らないと不思議そうな声を発せられました。
『御無沙汰をしております令嬢。先日帝都憲兵隊の本部にて、御父君であらせられます伯爵閣下への謁見の栄誉に浴しました』
『正解♪。御父様から貴女の話しは聞きましたけれど、よく私だと解りましたわね?』
さて、どのように御説明をするべきでしょうか?。
『本日は帝都貴族街にあります、ヴュルテンベルク家の城伯閣下の上屋敷にて開催されます晩餐会に出席していますけれど。御父君であらせられますケルン家の伯爵閣下は、城伯閣下よりも爵位が上位な止事無い身分であらせられる御方ですので。御息女であらせられます令嬢が、他の参加者に対して行う振る舞いの許容範囲は、ある程度は広いと推量をされます』
『他には?』
ふむ?。妙に私に対する関心が強いように感じます。
『私の両目を背後から塞がれていられます掌は、手入れが行き届いている肌理細かい柔肌です。止事無い身分であらせられる皆様方の令嬢や淑女が使用されます乳剤性軟膏を、日常的に使用されて肌の手入れをされていられます』
『他には?』
『競売会の会場で御会いした際と、同じ香水の香りを感じます。この香りは令嬢だけのものです』
シュルッ。
『やはり貴女は素敵だわ。花女史♪』
『恐悦至極に存じ上げます。令嬢』
両目を使えるようになりましたが、晩餐会の会場の注目が令嬢と私に集まっています。
「ケルン家の伯爵閣下の、私生児の女魔法使い殿なのかしら?」
「伯爵閣下の御息女であらせられる令嬢と同じ、金髪と瑠璃之青の瞳を、女魔法使い殿はされていますわね」
「異腹の姉妹だとしましたら、仲は良いようですわね」
{我が主と耳飾りの主は、容姿の共通点が多いですからな}
ヴュルテンベルク家の城伯閣下の上屋敷の中でも、脳内会話である念話は可能なのですね。髪飾り。
『また後で話しましょう。フロリアーヌ女史♪』
『はい。令嬢』
天から根元魔法の素質を授かりし選良である、魔法使いと女魔法使いが参加される晩餐会ですから。ケルン家の伯爵閣下の御息女であらせられます令嬢が出席される可能性は、頭の片隅にはありました。