エピソード181 貴族街の街路を馬車で移動しながら
『カラッカラッカラッ』
『希望さんが以前に仰られたように、帝都の貴族街を徒歩で移動されているのは、止事無い身分であらせられます貴族諸侯の皆様方の上屋敷にて働く、使用人の皆さんが大半のようですね』
ナディーネさんの御父君であらせられます男爵閣下の上屋敷にて、侍女の皆さんにより夜会服を着付けてて頂きましてから。馬車にてヴュルテンベルク家の城伯閣下の上屋敷を目指して移動しつつ、車窓から貴族街の街路を眺めながら話しますと。
『アタシは気にし無ぇが。まあ、止事無い身分に生まれ育つと、帝国の君主であらせられる皇帝陛下の都で馬車に乗らずに移動をするのは恥辱であると感じる、貴族諸侯の皆様方が大半のようだからな。花』
真実さんと並んで馬車内の四人掛けの席に座る私は、大切な幼馴染みである恵さんと仲良く並んで腰掛けていられます、男爵閣下の令嬢であらせられますナディーネさんに、瑠璃之青の瞳による視線を向けまして。
『レバークーゼン家の子爵閣下の御令息様であらせられるアンリ卿とは、ナディーネさんは以前から共に狩猟をされていたそうですが。御父君であらせられます男爵閣下が御治めになられていられます御領地内では、移動は馬に騎乗して行われていられるのですか?』
地方部出身の平民身分の村娘として、単純に興味を持ち質問をしますと。
『基本的にはそうだな。三人いる魔法使いの兄貴の中には馬に乗るのさえ面倒くさがり、根元魔法の飛翔で空中を飛び回りながら狩猟をする事もあったけれどな』
ナディーネさんの御爺様であらせられます准将閣下と共に、帝都の軍務省にて勤務されていられます帝国騎士身分の兄君の中には、魔法使いとしての考え方が強い御方もいられるようですね。
『アタシは純粋に馬に乗り駆けるのが好きだからな。飛翔で空を飛び回るのとは異なる爽快感が、馬で全力疾走するとあるぜ♪』
帝都魔法学園の乗馬の講義の際にも、背筋を伸ばされた美しい騎乗姿勢を保たれるナディーネさんは、純粋に乗馬が好きなようですね。
『カラッ、カラッ、カラッ』
『そろそろヴュルテンベルク家の城伯閣下の上屋敷に到着しますわね』
ヴェレーナさんが、緑青色の瞳で馬車の車窓から外を眺めながら仰られましたので。
『到着後は、ヴュルテンベルク家に御仕えされている使用人の方に、招待状を見せて晩餐会の席に案内をして頂ければよいのでしたね?』
私の確認に対して、ナディーネさんが御頷きになられまして。
『ああ、それで問題は無ぇな。ハンナとフロリアーヌは同じ平民身分だから、多分一緒に案内をされると思うぜ』
ヴュルテンベルク家の城伯閣下は、根元魔法至上主義者として知られている御方ですが。封建制度を政治体制に採用している帝国の中枢である帝都の貴族街にあります上屋敷にて開催されます晩餐会ですので、席順は身分の序列により分けられています。