エピソード18 同い年の四人の目標
『チャプンッ。シャアアアッ』
『ふうっ…』
『少しは落ち着いたみたいだな。花』
公衆浴場の大浴場のお湯に浸かりながら溜息を吐いた私に対して、一緒に湯浴みをしている希望さんが声を掛けて下さいましたので。
『はい。ナディーネさん。治癒魔法の実習講義が、刑場での現地解散となり助かりました』
本来でしたら帝都魔法学園に戻ってから解散となる予定の、治癒魔法の実習講義でしたが。引率を担当されていました老女教授が、刑場の衛兵長様と話す必要が生じましたので、私達学生は全員が現地解散となりました。
『帝国女騎士様は、フロリアーヌに対して当たりが強いよね。退役軍人のお爺さんが、帝国女騎士様の戦友なんだっけ?』
ナディーネさんの幼馴染みでもある、赤茶色の短いツインテールの髪型をされている恵さんが。灰白色の髪の毛をされている、長身のナディーネさんと仲良く並んで大浴場のお湯に浸かりながら尋ねられましたので。
『そうらしいです。孫娘の私からすれば、二世代前の祖父と帝国女騎士様が戦友であろうが、何一つ関係が無いのですが』
やや憮然とした口調で話した私に対して、ナディーネさんとハンナさんは揃って苦笑を浮かべていただけでしたが。
『やはりフロリアーヌさんも、私と一緒に帝国の君主であらせられる皇帝陛下の直臣の臣下でもある、帝国女騎士身分を目指すべきですわね』
免状貴族身分の商家に生まれ育たれた真実さんが、ここぞとばかりに私も帝国女騎士身分を目指すべきだと主張されますと。貴族諸侯であらせられる男爵閣下を御父君とされるナディーネさんが笑われながら。
『ヴェレーナは入学当初からぶれねぇな。事あるごとにフロリアーヌも、帝国女騎士身分を目指すべきだと焚き付けやがる』
帝都魔法学園を卒業後も、女魔法使いとして免状貴族身分の御父君から束縛されない為に、帝国女騎士身分を目指していられるヴェレーナさんは、大きく頷かれますと。
『本日もフロリアーヌさんは、刑場内での予測不可能な事態に対して非常に適切に対応なされましたわ。天から授かりし根元魔法の素質と大量の魔力の容量に加えて、予測不可能な事態にも適切な反応を示せるフロリアーヌさんと共に、帝国女騎士身分を目指す事が出来れば、非常に心強いですわね』
ヴェレーナさんによる説明に対して、ナディーネさんは頷かれまして。
『まあ、一人で目指すよりは、同い年のフロリアーヌと一緒の方が何かと有利になるのは確かだからな』
ふむ?。
『あんまりフロリアーヌは乗り気ではない感じだよね?』
ハンナさんの言葉に同意をして頷きまして。
『ヴェレーナさんは帝都魔法学園を卒業後も、免状貴族身分の御父君に束縛されない為に、上位の身分を目指される強い動機がありますが。私の場合は現時点では、帝国女騎士身分を目指す強い理由がありませんから』
私による正直な感想に対して、ナディーネさんは少し考えられましてから。
『帝国は君主であらせられる皇帝陛下を頂点に戴く、封建制度を政治体制に採用しているからな。平民身分のフロリアーヌには閲覧許可の降りねぇ本も、帝国女騎士身分になれば読めるようになるぜ』
『帝国女騎士身分になるには、具体的にはどうすれば良いでしょうか?』
私の態度が豹変しますと、ヴェレーナさんがナディーネさんに対して頭を下げられまして。
『感謝しますわ。ナディーネさん♪』
笑顔でお礼を言われたヴェレーナさんに対して、ナディーネさんも笑いながら。
『フロリアーヌがここまで食い付くとは思わなかったが、アタシも兄貴達が帝国騎士身分だからな。ヴェレーナ達と一緒に、帝国女騎士身分を目指してみるか♪』
ナディーネさんの発言に対して、隣のハンナさんも大きく頷かれまして。
『それなら私も帝国女騎士身分を目指すよ。具体的にどうすれば良いかは、フロリアーヌと同じで解らないけれど?』
ハンナさんと私に対して、ヴェレーナさんは満面の笑みを浮かべられまして。
『四人で力を合わせれば、帝都魔法学園で根元魔法を学ぶ女魔法使いでもある私達の全員が、帝国女騎士身分になれる可能性は現実的になりますわね♪』