エピソード179 アンリ卿とナディーネさんへの勧誘
『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』
『ヴュルテンベルク家の城伯閣下は、善くも悪くも根元魔法至上主義な怜悧な魔法使いとして知られている御方だな』
真実さんと帝都魔法学園に戻りまして、学生食堂で夕餉を摂っていますけれど。帝国の君主であらせられます皇帝陛下の宮城にて、御信任の厚い官吏として宮仕えをなされていられます男爵閣下を御父君とされる令嬢の希望さんによる話しに。レバークーゼン家の子爵閣下を御父君とされますアンリ卿が御頷きになられまして。
『私は父上から正式に認知して頂けましたが、止事無い身分であらせられる貴族諸侯な皆様方の社交界では、黒髪と褐色の肌色をしている奴隷腹の庶子だと白眼視をされる御方も居る中で。城伯閣下は私が天から根元魔法の素質を授かりし魔法使いであるという一点のみを重視されまして、出自や肌の色を一切気にせずに、親しく御声掛けをして下さいます』
根元魔法至上主義者だと聞きますと、あまり良い印象を持ちませんが。
『城伯閣下がカール卿の姉君であらせられます令嬢と、御自身の跡継ぎとなる帝国騎士様との縁組により、両家を結び付けようとされていられますのも。ツヴィングリ男爵閣下が異国のシュヴァイツ共和国のゾロトゥルン州から移住されて来られました、平民身分の生まれなのを、一切気になされていられないからなのですね』
私による見解に対して、アンリ卿とナディーネさんは揃って御頷きになられまして。
『花の言う通りだ。城伯閣下は出自を一切気にされず、天から根元魔法の素質を授かりし魔法使いか女魔法使いであるかのみを判断基準とされる怜悧な御方だからな。免状貴族身分のヴェレーナと、平民身分のフロリアーヌが晩餐会に出席しても、普通に歓迎されると思うぜ』
{帝国は封建制度を政治体制に採用していますが、御領地と領民を御治めになられていられる止事無い身分であらせられる貴族諸侯の皆様方の中には、様々な考え方をされる御方が居られる多様性が豊かな国ですな。我が主}
帝国の君主であらせられます皇帝陛下に対して忠実でありさえすれば、御領地と領民を御治めになられていられます止事無い身分であらせられる貴族諸侯の皆様方は、統治に関しては広範な裁量権を行使する事が可能なのが、封建制度という政治体制ですから。髪飾り。
『アンリ卿とナディーネさんは、城伯閣下の晩餐会に出席はされないのですか?』
私の疑問に対してアンリ卿とナディーネさんは、お互いの顔を見合わされまして。
『私は帝都魔法学園を卒業後は、レバークーゼン家の御当主であらせられます子爵閣下の父上に、家臣の騎士として御仕えさせて頂ける予定なのですが。城伯閣下からは当家に仕えれば厚遇するとの、非常に有難い御言葉を頂きますので。ヴュルテンベルク家の晩餐会に出席をしますと、御断りするのが非常に心苦しく感じます。フロリアーヌ女史』
成る程。アンリ卿は城伯閣下に御声掛けを頂く度に、ヴュルテンベルク家の家臣にならないかと勧誘をされる訳ですね。
『アタシもアンリと似たようなもんだな。ただ、まあ、帝都魔法学園を卒業した後の進路として、皇帝陛下の直臣の臣下である帝国女騎士身分を目指していると断れば、今後は城伯閣下からの勧誘を受けずに済むかもな?』
ナディーネさんは、ヴュルテンベルク家の晩餐会に出席してもよいかなと御考えのようですね。