エピソード173 掛け替えの無い大切な幼馴染み
『恵さんは、本当に交友関係が広いと感じます』
『えっ、そうかな?。花』
閉店間際の生菓子屋にて、見切り品をお得な価格にて購入された幸せそうな表情をされていますハンナさんと、魔道具の街灯の明かりが照らす夜の帝都の街路を並んで歩きながら。
『ハンナさんが居なければ、私は今でもザスキア女史の事をその他大勢の一人としか認識していませんでした。彼女との関係を修復する機会を作って頂けた事に、心底よりの感謝の気持ちを抱いています』
嘘偽りの一切無い、本心からの私による感謝の言葉を聞いたハンナさんは、明るい笑顔を浮かべられまして。
『フロリアーヌとザスキアは、放ってはおけないと感じさせるからね♪』
ふむ。私とザスキア女史は、放ってはおけないですか?。
{我が主とザスキア女史の間で、帝都魔法学園で共に根元魔法を学ぶ同い年な女子学生の女魔法使いであるという以外に、何か共通点がありましたかな?}
『私もそうなんだけれど。希望に引っ張ってもらえると、多少の無茶でも出来るんだよね。フロリアーヌとザスキアも、背中を少し押してあげれば良い友達になれると思ったから♪』
ハンナさんは本当に良い人です。ナディーネさんが幼馴染みを大切にされる気持ちが、少しだけではありますが理解する事が出来たように感じます。
『ナディーネさんが少し羨ましくも感じます。ハンナさんという素敵な幼馴染みが居るのですから』
『美人なフロリアーヌに真顔で言われると少し恥ずかしいけれど。ありがとう♪』
止事無い身分であらせられます、貴族諸侯の男爵の爵位の御父君の令嬢な末娘として生まれたナディーネさんにとっては、同い年で同性の幼馴染みであるハンナさんは、掛け替えが無い大切な存在であるとよく解ります。
{腕輪の主には、御父君であらせられる男爵閣下が御治めになられていられる御領地に隣接をする、レバークーゼン家の子爵閣下の御令息様のアンリ卿も居られますが。同性な幼馴染みの女魔法使いである存在は、他家の貴族諸侯の家門に生まれた止事無い身分の魔法使いとは大きく異なるようですな。我が主}
貴族諸侯であらせられる皆様方の社交界を気にせずに済む、平民身分のハンナさんの存在は、ナディーネさんにとっては本当に大きな心の支えとなっているのだと思われます。髪飾り。
『ねえ、フロリアーヌ。ナディーネもそうだけれど、意志ある魔道具でもある遺失魔道具との、脳内会話である念話に集中していると。知らない人から見ると、何を考えているのか解らないという印象を与えるよ』
『失礼をしましたハンナさん。私にとっては髪飾りとの念話は、思考を整理して纏めるのに非常に役立つのですが。帝都魔法学園の学生寮の自室で、独りで過ごす時に集中的に行うべきですね』