エピソード169 僅かに感知をする奇妙な違和感
『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』
『アハハハッ♪』
ふぅむ…?。
{どうかされましたかな?。我が主}
『いつもの飲食店に行くか?』
『ああ。あの店でいいだろう』
今宵の帝都の街路も、普段と変わらない活気がありますけれど、奇妙な違和感を覚えます?。髪飾り。
{図書館での読書を終えられました後に、公衆浴場へと向かう夜の帝都の道は、我が主からしますと目を瞑っていても歩ける程に慣れ親しんでおりますから。普段と異なる僅かな変化を感知されていられるのかも知れませんな?}
髪飾りの言う通りかも知れません。具体的に何が奇妙なのかは解りませんが、違和感を覚えます?。
{どうされます?。我が主}
そうですね…。このまま公衆浴場に向かいます。万ヶ一尾行されているのでしたら、男性でしたら女湯には入れませんし、女性に尾行されていとしても、脱衣所で普段は見掛けない人を確認する事が出来るかも知れませんから。
{男女の性別で分かれている公衆浴場のような施設は、こうした時には便利ですな。我が主}
その通りですね。万ヶ一誰かに尾行されているとしましたら、非常に巧みな尾行術だと思います。
{我が主は以前に裏社会の犯罪者に跡を付けられた際には、気配を感知をされましたが。今宵は違和感は覚えられましても、尾行されているとは断定が出来ずにいますからな}
地方部出身の平民身分の村娘の私は、一人で水汲みをしている際に草叢から猪等の野生の獣がいつ飛び出して来て、猪突猛進をしてくるかも解らない環境で生まれ育ちましたから。ある程度は気配に敏感でないと生き残れませんでしたから。髪飾り。
{帝都のような大都市ですと、野生の獣に襲われる心配をしなくて済む代わりに、人間に警戒せねばいけませんからな。我が主}
全くその通りですね。まあ、私の場合は女性という事もあり、故郷でも獣欲に駆られた男性に襲われかけた経験はありますけれど。天から根元魔法の素質を授かりし選良の女魔法使いですので、麻痺魔法で身動きを取れなくしてから、家長でもある退役軍人の祖父に後は御任せしましたけれど。
{魔法使いでもある我が主の御爺様は、非常に頼りになる御方なようですな}
退役軍人でもある祖父は、御代官様とも非常に良好な関係を築かれていましたから。孫娘である私を襲い穢そうとした獣欲に駆られた暴漢に対しても、厳格な処分をされたのは疑いの余地はありません。その後に同じ人物を見掛ける事は二度とありませんでしたから。髪飾り。