エピソード166 根元魔法と精霊魔法の違い
『私達のような魔法使いと女魔法使いが扱う根元魔法の中には、一時的に不可視となる姿隠之魔法がありますが。呪術師や女呪術師の扱う精霊魔法にも、周囲から見えなくなる魔法があります』
帝都魔法学園での講義を行われている教授の話に、私達受講生が頷きますと。
『天から根元魔法の素質を授かりし私達は、体内に魔力が残っていれば基本的にいつでも根元魔法を発動可能ですが、精霊魔法は力を貸してくれる精霊が居ない場所では、発動が不可能となる制約があります』
帝国において根元魔法の方が精霊魔法よりも盛んとなった理由の一つとしては、発動時の制約の少なさもあります。
『他にも根元魔法と精霊魔法には大きな違いがあります。根元魔法は魔力を吸収する性質を持つミスリル銀を、百合の抽出液を触媒として適切な加工を行えば様々な魔道具を製造して、社会全体の発展に寄与する事が出来ますが。精霊魔法は精霊石のような特別な例を除けば、物として留める事は出来ません』
私達が暮らすのは物質界ですが、異なる次元として魔界や精霊界が存在します。
『ごく稀にではありますが、物質界の中で極端に特定の精霊力の強い場所では、歪みが生じて精霊界から精霊力が流れ込み、凝縮されて精霊石が生成されます』
呪術師や女呪術師が水の精霊石を所持していれば、砂漠の中でも大量の水を呼び出す事も可能となると、以前に読んだ本に書いてありました。
『精霊石の最大の問題点は、偶然生成されますので。工房で製造される魔道具とは異なりまして、流通している絶対数が少ない点にあります』
髪飾りのように、製造方法が解明されていない、意志ある魔道具でもある遺失魔道具もありますけれど。
{我が主の仰られる通りですが、日常生活を便利で快適にする上下水道網や照明器具等の魔道具の恩恵には、根元魔法を扱えない一般人も大いに享受しておりますな}
地方部出身の平民身分の村娘である私からしますと、上下水道網と街灯が整備されている帝都での便利で快適な生活に一度慣れますと、不便で暮らし難い故郷には決して戻りたくなくなります。髪飾り。