エピソード164 人生をやり直せる可能性
『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』
『御早う御座います。真実さん』
『御早う御座います。花さん♪』
翌朝。洗面所での洗顔を済ませて、女子寮の自室にて朝の身嗜みを整えましてから、学生食堂へと朝餉を摂る為に赴きますと。ヴェレーナさんが掲示板を眺めていられました。
『何か新しい掲示物が貼り出されたのですか?。ヴェレーナさん』
私の問いに対して緑青色の瞳の視線にて、掲示板を御覧になられていたヴェレーナさんは、楽し気な笑みを見せられまして。
『はい。フロリアーヌさん♪。帝都にある奴隷市場から逃亡した奴隷の中に、精霊魔法を扱える女呪術師が混ざっているそうですわね♪』
成る程。帝都の奴隷市場からどのように逃亡したのかと疑問に感じていましたが、精霊の声を聞き力を借りる事が出来る女呪術師が一枚噛んでいましたか。
{帝国では根元魔法が盛んですから、我が主と首飾りの主のような女魔法使いはそれなりに居ますが。精霊魔法を扱える女呪術師となると珍しいですから、逃亡を許したのかも知れませんな?}
可能性はあると思います髪飾り。最初から女呪術師だと解っていれば逃亡防止の対策を取られると思われますが、知らずに不意を突かれたのかも知れません。
『逃亡した女呪術師である女性奴隷労働者に対して懸けられた懸賞金の金額は、一般的な奴隷が逃亡した際の十倍となっていますわね。今頃賞金稼ぎが血眼となり、帝都中を草の根を分けてでも探し出そうとしているはずですわ。フロリアーヌさん♪』
地方部出身の平民身分の村娘である私は、帝都での逃亡奴隷に対する懸賞金の金額の一般的な相場を知りませんが。ヴェレーナさんの話から判断をしますと、滅多に無い高額な懸賞金が、精霊魔法を扱える女呪術師には懸けられているようです。
『これだけの高額の懸賞金になりますと、帝都の貧民窟に逃げ込みましても、密告して懸賞金を手に入れて、極貧の生活から抜け出そうとする貧民が現れるかも知れませんわね』
{密告したのが露見すれば、貧民窟の他の住民からの私的制裁を受ける恐れはありますが。極貧生活から抜け出せる千載一遇の好機であると考えれば、仲間を売る可能性は確かにありますな。我が主}
貴方の言う通り、密告して懸賞金を受け取り帝都から逃げ出して、顔見知りが誰も居ない地方部にて農地でも買い人生をやり直せる可能性に賭ける貧民が現れるかも知れません。髪飾り。