エピソード162 安易な同情心は帝都魔法学園にて共に根元魔法を学ぶ学友に対して失礼です
「む、無理な御願いを聞いて頂きまして、心底よりの御礼を申し上げます。花女史…」
『御気になさらずにザスキア女史。貴女とこうして二人きりで話ながら、帝都魔法学園の学生寮まで帰るのも楽しいですから』
根元魔法の帰還にて、寄宿生活を送っている帝都魔法学園の女子寮に帰ろうかと思いましたけれど。ザスキア女史から話ながら歩いて帰りたいと懇願されましたので、少し遠回りをしながら徒歩で移動をしています。
『ありましたザスキア女史。帝都の奴隷市場の正門です』
先程に飲食店にて、カール卿と面識のある女性従業員に見せて頂きました懸賞金付きの人相書きが気になりまして、少し遠回りをして帝都にある奴隷市場の正門の様子を見に来ました。
『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』
{以前に通り掛かった時よりも、人が集まっておりますな。我が主}
衛兵隊の隊員も居ますから、逃亡した奴隷の足取りを調べているのだと思われます。髪飾り。
『ザスキア女史は、奴隷市場の中に入られた事はありますか?』
プルップルップルッ。
私の問いに対してザスキア女史は、小刻みに痙攣するかのように首を左右に振られますと。
「い、いえ、フロリアーヌ女史。帝国の奴隷市場では、ケーニヒスベルク家の辺境伯閣下が大将の軍階級にて指揮なされていられます、東方拡大戦争で戦利品として獲得されました、ザクセン公国の住民が数多く売りに出されていますから…」
…ザスキア女史からしますと、複雑な気持ちがするのは当然ですね。
『思い至らずに不躾な質問をしてしまいました、心底よりの御詫びを申し上げます。ザスキア女史』
私が真実さんに言われて、一年以上伸ばしている金髪を揺らしながら深々と御辞儀を行い謝罪をしますと、ザスキア女史は身体全体を小刻みに痙攣させるように震わせながら。
「お、畏れ多いです。フロリアーヌ女史。その、私は普段からザクセン公国の事は考えないように生きていますから、御気になさらないで下さい」
ザスキア女史の御父君は、帝国の君主であらせられます皇帝陛下の直臣の臣下の帝国騎士身分にて、外務省で働かられていますが。先祖代々暮らして来たザクセン公国と交戦状態にある帝国の中枢である帝都にて暮らすザスキア女史は、本当に辛いと思われますが。安易な同情心は、帝都魔法学園にて共に根元魔法を学ぶ学友に対して失礼です。
『人相書きにありました逃亡奴隷を見掛ける事がありましたら、帝都魔法学園にて共に根元魔法を学ぶ学友である女魔法使いの私達で捕縛をして、帝国に貢献をしましょう。ザスキア女史』
私の話を聞かれたザスキア女史は、はにかみながらも笑みを見せられまして。
「は、はい。フロリアーヌ女史。そ、その。学友と呼び慣わして頂けて、本当に嬉しいです♪」