エピソード156 黙っているのは不義理
『教えて頂きまして、心底よりのお礼を申し上げます。花女史』
『御気になさらずにアンリ卿。帝都魔法学園にて共に根元魔法を学ぶ学生として、御話をしないのは、不義理だと感じたまでですから』
学生食堂で夕餉を摂りながら、レバークーゼン家の子爵閣下の御令息様であらせられますアンリ卿と御話をしましたが。場所を談話室へと移しまして、帝都憲兵隊本部にて副総監であらせられますケルン家の伯爵閣下から、貴族街にあります憲兵隊の総監であらせられる侯爵閣下の上屋敷にて行われる御会談の席を、後学の為に見学させて頂ける運びとなった内容を御伝えしました。
『父上からは御伺いしていましたが、皆さんにお話しをする許可は頂いておりませんでしたので黙っていた事を、謝罪させて頂きます。フロリアーヌ女史』
{止事無い身分であらせられます、貴族諸侯の家門の御当主様を御父君とされるアンリ卿は、帝都魔法学園にて共に根元魔法を学ぶ我が主などの学友を相手に、常に話しても良い内容と悪い内容を頭の中で考えながら会話しているようですな}
貴族諸侯であらせられる皆様方の社交界においては、必須とされる能力なのだとは思われますけれど。地方部出身の平民身分の村娘に過ぎない私からしますと、日々神経を磨り減らす大変な生き方であると感じます。髪飾り。
『勝手にアンリ卿に御話した事に関して、真実さんからは苦言を呈されるかも知れませんけれど。帝国の君主であらせられます皇帝陛下の直臣の臣下である、帝国女騎士身分を共に目指していましても。黙っているのはアンリ卿に対して不義理であると判断をしました』
{我が主は、首飾りの主に対して、特別な感情を抱いているかと思われましたが?}
ヴェレーナさんに対しては、深く感謝をしていますけれど、彼女の顔色を窺いながら今後生きていくつもりはありません。ヴェレーナさんとは同じ女魔法使いとして、対等な立場にて、末永く共に歩めるならば幸せであると考えています。髪飾り。
『フロリアーヌ女史のそうした気高い精神を、ヴェレーナ女史も気にいられているのだと思われます♪』
そうであるのなら、私も嬉しく思います。
『有難う御座います。アンリ卿』
『私の方こそありがとうございました。フロリアーヌ女史♪』