エピソード155 読み難い御方
『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』
『お一人で学生食堂にて、夕餉を摂られるのは珍しいですね?。花女史』
『はい。アンリ卿。希望さんと、ザスキア女史と、真実さんと、恵さんは、それぞれ済ませるべき用件があります』
帝都の官庁街から根元魔法の帰還にて、帝都魔法学園の学生寮まで戻って来ましてから、学生食堂で一人で夕餉を摂っていますと。レバークーゼン家の子爵閣下の御令息様であらせられます、黒髪と褐色の肌色をされています、手入れの行き届いている純白の並びの良い歯が印象的な、貴公子のアンリ卿が御声掛けをして下されました。
『向かい側の席を宜しいでしょうか?。フロリアーヌ女史』
アンリ卿は奴隷腹の庶子とはいえ、子爵閣下から正式に認知された御令息様ですから。地方部出身の平民身分の村娘に過ぎない私には、学生食堂で向かい側の席に腰掛けられる際に許可を求める必要は、本来でしたら無いのですが。
『はい。アンリ卿』
『ありがとうございます。フロリアーヌ女史♪』
{奇妙な御方ですな?。我が主}
何を御考えなのか、読み難い御方ではありますね。アンリ卿は。
『ナディーネさんに会えずに残念ですね。アンリ卿』
以前からナディーネさんとは共に狩猟をされる関係のアンリ卿ですので、私に話し掛けるのは、ナディーネさんの友人の一人だと認識しているからだと思われます。
『令嬢ナディーネ女史は、大切な幼馴染みであるハンナ女史以外の私達の事も、良き学友だと考えて下されているようです。フロリアーヌ女史♪』
アンリ卿は笑顔にて話されますと、学生食堂の向かい側の席から私を眺められまして。
『ザスキア女史が古物市にて購入されました、魔道具の香水の瓶による、一時的な効果は消えたようですね。フロリアーヌ女史』
大気中の魔力が身体に集まる効果は消えていますから、副作用である魅了効果も終わっているはずです。
『はい。アンリ卿。退役軍人の祖父から理論だけは学んでいました、原子核崩壊を生まれて初めて発動する事が出来たのは。天から根元魔法の素質を授かりし女魔法使いとして、非常に貴重な体験で勉強となりました』
帝都魔法学園にて、共に根元魔法を学ぶ女子学生でもある女魔法使いな私による話を、アンリ卿は笑顔を見せながら聞かれていられました。