エピソード153 帝国の官僚機構で働かれていられる皆様方
『多分話は通っているとは思うが。一応は上屋敷に行き、爺さんに事の顛末を伝えて来る』
帝都憲兵隊本部の建物の外に出まして、引率役の帝国女騎士身分の老女教授と別れましてから、希望さんが仰られますと。
『私もこの件に関しては、御父様に報告せざるを得ませんわね…』
帝都にて手広く商売をされて成功されていられます、免状貴族身分の豪商な御父君の家父長権から自由になる為に、帝国女騎士身分を目指していられます真実さんも。ケルン家の伯爵閣下と謁見して決まった内容は、報告せざるを得ないと判断されました。
『私も同行した方が良いですか?。ヴェレーナさん』
御父君とは顔を合わせたくなさそうなヴェレーナさんに同行を申し出ますと、まだ血の気が引いている顔色ではありますが、嬉しそうに笑みを見せられまして。
『御気持ちは嬉しく思いますわ、花さん♪。でも、私一人でも大丈夫ですわ』
御父君と娘による父娘の関係ですから、他人である私があまり強く申し出るべきではないと考えまして。
『解りました。また別の機会にヴェレーナさん』
『はい。フロリアーヌさん♪』
私とヴェレーナさんによる遣り取りを眺めていられました、恵さんとザスキア女史ですが。
『私もお父さんに手紙は書いた方が良さそう』
「わ、私も、父に報告しないといけません…」
ハンナさんのご父君は平民身分ですけれど、ナディーネさんの御父君であらせられます男爵閣下から出入りを許されている御用商人ですし。ザスキア女史の御父君は、外務省にて勤務されていられます帝国騎士様です。
『ハンナさんとザスキア女史は、競売会に参加した私達に巻き込む形となり、お詫び申し上げます』
私による謝罪の言葉に、ナディーネさんとヴェレーナさんも続かれまして。
『悪ぃなハンナにザスキア。完全に巻き込んだ』
『申し訳なく思いますわ。ハンナさんにザスキア女史』
私達による謝罪を受けたハンナさんは、明るい笑顔を浮かべられまして。
『気にする必要は無いよ三人とも♪。あっ、でも、お父さんに手紙を書きたいから、ナディーネの上屋敷で必要な道具を貸してもらえる?』
『アタシじゃ無くて親父の上屋敷だが。ああ、構わねえよハンナ』
ハンナさんの方は、問題は無さそうです。
『ザスキア女史の御父君であらせられます帝国騎士様は、外務省での勤務を終えられますと、御自宅に帰宅なされるのですか?』
ナディーネさんの御父君であらせられます男爵閣下は、官吏として宮仕えをされていられます皇帝陛下の宮城にて、数ヶ月間泊まり込みで仕事をされていられますが。
「父は十日に一度くらいは家に帰って来ますから、一割程度の確率で会えるかと思います。フロリアーヌ女史」
…帝国の官僚機構で働かれていられる皆様方は、職場での泊まり込みが基本なのでしょうか?。