エピソード152 謁見後の有様
『伯爵閣下との応対を担当して頂きまして、心底よりの御礼を申し上げます。希望さん』
『……気にすんな花。あの場ではアタシしか出来ねぇからな』
帝都憲兵隊の副総監を勤められていられます、ケルン家の伯爵閣下との謁見を終えて退室しますと。私以外の全員が御手洗に駆け込まれて、暫くの間は出て来られませんでした。
『だ、大丈夫?。ザスキア…』
「…わ、私はまだ生きているのでしょうか?。恵女史?」
{散散な様子ですな。我が主}
貴方も伯爵閣下の御前では、私の脳内に直接念話で話し掛けるのさえ止めていましたね。髪飾り。
『フロリアーヌさんは流石ですわね。伯爵閣下の強大な魔力と間近にて対面しましたのに、平然とされていられます…』
普段は余裕のある姿を崩されない真実さんも、御手洗に駆け込まれた後に血の気の引いた蒼白な顔色にて出て来られました。
『本日の帝都魔法学園の根元魔法の講義にて、ザスキア女史が古物市で購入されました、魔道具である香水の瓶の効果で、一時的に魔力が強化されていたのが幸運でした。ヴェレーナさん』
『それを言ったら私とヴェレーナは、一時的に魔力を強化していてこの有様なんだけれど…』
ハンナさんが話されていますと、背後から声が聞こえまして。
『フロリアーヌ女史は、退役軍人でもある魔法使いのおじい様から、女魔法使いとして本当に良く鍛え上げられていると感心をします』
私達がケルン家の伯爵閣下と謁見している間は姿が見えなかった、祖父の戦友でもある帝国女騎士身分の老女教授が、再び現れて声を掛けられましたので。
『恐悦至極に存じ上げます。帝国女騎士様』
私の事を戦友でした退役軍人でもある祖父の孫娘として見ていられます老女教授は、恭しく深々と御辞儀をした女子学生である私を、一切の感情を感じさせない表情にて御覧になられますと。
『憲兵隊本部の建物を出ましたら、現地解散とします。根元魔法の帰還でも徒歩でも好きな手段で、学生寮に帰りなさい』
『はい。帝国女騎士様』
帝都魔法学園まで老女教授と一緒に帰らずに済むのは、正直に言えば気が楽です。