エピソード147 ヴェレーナさんによる助言
『花さん』
『はい。何でしょうか?。真実さん』
光り輝く魅力に溢れるヴェレーナさんが、悪戯っぽく感じられる蠱惑的な笑みを御浮かべになられながら。
『香水の瓶を使われる前に、お耳を拝借しますわね♪』
フワッ。
ドクッドクッドクッッ!。
ヴェレーナさんが私の耳に口を寄せられますと、香水の非常に良い香りが私の鼻腔を刺激しました。
{動悸も烈しくなられていられますな。我が主♪}
「一時的に魔力を強化される前に、魔法障壁を周囲に展開するのをお勧めしますわね。フロリアーヌさん♪」
ふむ?。
{首飾りの主の助言に同意をいたします。我が主}
『解りました』
『それでは少し離れていますわね。フロリアーヌさん♪』
…ヴェレーナさんが私から離れていくのを、心底より残念に感じながら、脳内の意識を切り替えまして。
『魔法障壁』
私の周囲に不可視の障壁を展開する、魔法障壁を発動しました。
『あれ。フロリアーヌはこれから標的に向けて攻撃魔法を放つなら、魔法障壁は邪魔なはずだけれど?』
恵さんによる疑問に対してヴェレーナさんが、光り輝く魅力に溢れる笑みを向けられまして。
『私の推測が正しければ、フロリアーヌさんが一時的に魔力を強化して放たれる攻撃魔法に関しては、魔法障壁は邪魔にはなりませんわね。ハンナさん♪』
教授だけでなくヴェレーナさんも、私が退役軍人の祖父から学んだ攻撃魔法が何か、予め解ったようです。
『それでは。シュッ』
シュウウウッ
成る程。大気中の魔力を一時的に体内に大量に取り込む事により、扱える攻撃魔法が強化…。
『ガアンッ。バタッ』
『あっ』
『こうなる事が解っていやがったな。ヴェレーナ』
『フロリアーヌさんは普段から非常に魅力的な女性ですから、香水の瓶の効果で魅了効果も加われば、恋多き乙女なザスキア女史は、後先を考えずに突進されるかと思いましたわ。希望さん♪』
魅了効果が加わった私に向けて突進されようとされたザスキア女史が、不可視の障壁に激突して倒れ込んで気絶されました。
『…ザスキア女史に感謝しなければなりません。危うく自制心を失い、フロリアーヌ女史目掛けて突進する所でした』
レバークーゼン家の子爵閣下の御令息様であらせられますアンリ卿が、自制心を総動員されている表情にて、口から絞り出すように話されました。
『ザスキア。大丈夫かな?』
『私が診ますハンナ女史』
教授がザスキア女史に近付かれまして、深刻な怪我をしていないか確認して下されていますので。私は標的に瑠璃之青の瞳による視線を向けて、理論だけは知っていた、生まれて初めて発動する根元魔法に意識を集中しました。