エピソード146 目移りをされる人とされ無い人達
『死之舞踏』
『………………………』
何時にも増して光り輝く魅力に溢れる真実さんが、標的に向けて根元魔法の死之舞踏を放たれますと、皆さんが沈黙してしまいましたので。
『素晴らしいですヴェレーナさん。死之舞踏は標的に命中さえすれば、必ず生物の命を奪う文字通りの必殺魔法です』
攻撃魔法の中でも、即死魔法として恐れられている死之舞踏ですが。地方部出身の平民身分の村娘である私は、退役軍人でもある農家の家長である祖父が、農地を荒らす害獣である猪を駆除する際に発動するのを見た事がありますので。野生の獣を仕留める為の攻撃魔法であるとの認識をしています。
『ありがとうございます花さん。非常に嬉しく思いますわ♪』
『…………。ブンッブンッブンッ』
『さて、次は私の番ですね』
『髪飾りを着けてる金髪を激しく揺らしながら、何事も無かったかのように振る舞うフロリアーヌは、案外神経が図太ぇな』
『私では無く、恵さんの方を見ながら、同じ台詞を吐けますか?。希望さん』
『…悪かったよ。まあ、フロリアーヌが一時的に魔力を強化する香水の瓶を使うと、副作用の魅了効果で周囲がどういう反応を示すかは、少し興味があるな♪』
ナディーネさんが笑いながら余裕を見せられますと、魅了効果が続いているハンナさんが不思議そうな表情を見せられまして。
『ナディーネはフロリアーヌに魅了効果が付与されても平気だと、確信をしているように見えるけれど?』
ナディーネさんの大切な幼馴染みであるハンナさんは、周りの人達に対して細やかな気遣いが出来る女性ですけれど。
『ナディーネさんとハンナさんは、私が激しく胸中を揺さぶられましたヴェレーナさんを見ても、特に動揺されてはいませんから。私が魅了効果を付与されましても、平気だと考えるのは不思議ではありません』
私による見解を聞かれてハンナさんは、成る程と得心された表情を見せられまして。
『確かに私とナディーネはヴェレーナを見ても、フロリアーヌのように動揺はしないものね』
『ハンナの言う通りだな』
私はそこまでヴェレーナさんに対して、動揺をしているのでしょうか?。
{我が主の金髪に着けて頂いております髪飾りとしましては、激しく揺さぶられておりますので、ハンナ女史の見解に完全に同意をいたします}
確かに貴方の立場からすればそうですね。激しく揺さぶって申し訳なく思います。髪飾り。
{御気になさらずに。我が主♪}
『ザスキア女史。魔道具である香水の瓶を貸して…』
ザスキア女史の方を見ますと、アンリ卿や他の生徒達と一緒に、惚けたような眼差しにてヴェレーナさんを見詰めていられましたから。
『お借りします』
ザスキア女史の返事を期待するだけ無駄だと判断しまして、腕から香水の瓶を取りました。
『ザスキアはヴェレーナよりも、フロリアーヌの方に関心があると思ったのだけど?』
『ザスキアはハンナにも魅了されていたからな、気が多いんじゃねぇか?』
確かにハンナさんとナディーネさんの仰られる通り、ザスキア女史は目移りが激しいようにも感じられます。
{ザスキア女史は恋多き乙女なようですな。我が主♪}
そうなりますと、次は私がザスキア女史の恋心の対象となりますね。髪飾り。