エピソード142 一時的な引き上げ
『火矢。ボウッ』
『私達が暮らす帝国は、根元魔法が非常に盛んな国ですので、皇帝陛下の軍隊である帝国軍でも、魔法使いと女魔法使いが活躍されていられますが。軍隊内で最も多用されている攻撃魔法は、火矢となります』
帝都魔法学園において、攻撃魔法等の実習を行う中庭に移動されました教授は、講義を受講しています私達の前で、掌に火矢を出現させながら御話になられますと。
『帝国軍において、火矢が最も多用されている理由は主に二つあります。一つは人間は基本的には火を恐れますから、軍場において敵陣を焼き払う攻撃魔法が、非常に有用であるという点です』
{基本的ですから、例外もあると教授は講義されていられますな。我が主}
人間の中にも火を一切恐れない人物も居ますから。そうした人格の持ち主には、火矢での攻撃による威嚇効果は望めません。髪飾り。
『二つ目の理由としましては、火矢なら天から根元魔法の素質を授かりし選良である、魔法使いと女魔法使いなら、誰でも扱える攻撃魔法である点です』
火矢を出現させる魔力すら持ち合わせていなければ、帝都魔法学園に入学する事は出来ません。
『火槍。ボウッ』
教授は火矢に続きまして、火槍を掌に出現させられますと。
『火矢は主に焼き討ち等に用いられますが、火槍は要塞の城壁を貫通させる目的で使用される場合の多い攻撃魔法となります』
要塞に立て籠もり籠城戦を行う敵に対して、城壁を貫通させる火槍は、要塞内に身を隠しても安全では無いと思い知らせる効果のある攻撃魔法となります。
『火矢と火槍は、軍場において使用目的の異なる攻撃魔法となりますが。火槍は火矢と比べますと、出現させるだけの魔力の持ち主である魔法使いと女魔法使いが限定されます』
教授はそう仰せになられますと、講義を受講している私達を眺められまして。
『火槍を出現させられない魔法使いと女魔法使いも、先程に花女史が魔力を流し込んだ百合の抽出液が変化した香水を使えば、一時的に火槍を出現可能な魔力まで引き上げられます』