エピソード14 研究者気質の持ち主
『退役軍人のおじい様から、適切な手法を学ばれた花女史により、咎人の背中の血は洗い流されましたから。怪我の程度を確認した後に、貴女達四人の中の一人が、鞭打により裂けた皮膚の裂傷を、治癒魔法で癒すように』
『『はい。帝国女騎士様』』
帝都の刑場で働かれていられる、経験豊富な熟練の拷問吏の方による鞭打でしたので。痛みを与える為に表皮だけを裂いて、真皮には傷付けていないのが。水で血を洗い流した咎人の背中を確認すると解りました。
『やはり帝都の刑場にて働かれている拷問吏の方の鞭捌きは、地方部で御代官様の部下として働いている人よりも技術が格段に優れていられます。表皮だけを裂いて真皮には傷付けない腕前の持ち主は、地方部では見掛けた事がありませんでした』
頑丈な器具に拘束されている、咎人の背中の怪我の具合を入念に観察しながら話す私に対して。灰白色の髪の毛をされている希望さんは藍色の瞳を、銀白色の髪の毛をされている真実さんは緑青色の瞳を向けながら、揃って笑みを浮かべられまして。
『フロリアーヌは読書している時の集中力も凄えが、興味のある観察対象を前にすると、直前までの不機嫌さが消え去るな♪』
『本好きなフロリアーヌさんは、研究者気質の持ち主ですわね♪』
ナディーネさんとヴェレーナさんによる私に対する感想を聞き、恵さんの方に瑠璃之青の瞳による視線を向けまして。
『ハンナさんもそう思われますか?』
私の問いに対してハンナさんは、可愛らしい子犬を連想させる仕草で小首を傾げられましてから。
『ナディーネ達の言う通りかもね。フロリアーヌは集中して考え込んでいる時は、話し掛け難いと感じる雰囲気だから』
ハンナさんの言葉に、私達四人の様子を遠巻きに眺めている、治癒魔法の実習講義に参加をされている他の帝都魔法学園で学ぶ学生達も、全員が揃って頷いて同意を示されていました。