エピソード130 非常に立派な貴公子
『本日は非常に楽しい一時を過ごす事が出来ました。改めてお礼を申し上げます。花女史♪』
飲食店での夕餉を摂り終えますと、ツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様であらせられますカール卿が、育ちの良さを感じさせる満面の笑みを見せられながら、隣の席に腰掛けている私に対してお礼を述べられましたので。
『私の方こそ、幼年学校にて学ばれていられます男子学生に対する誤解に基づいた先入観を、本日は解く事が出来ました。カール卿』
カール卿の向かい側の席に腰掛けていられます兵士卿が、隣に座る姉君であらせられますザスキア女史に視線を向けられまして。
『幼年学校の男子学生に対する先入観って何かな?。姉さん』
弟のギュンター卿に対しては、普通に話せるザスキア女史が。
『あー、うん。帝都魔法学園の学生、特に女子学生から見ると。幼年学校の男子学生は、いつも複数名で集団行動をしているから。お茶を飲みに飲食店とかに入っても、同じ制服を着ている男子学生の集団が、お店の席を全て埋めていたりして、近寄り難いと感じているかな。ギュンター』
{ザスキア女史によるこの見解に関しては、我が主の他にも、腕輪の主と、首飾りの主と、恵女史も、同意をされるでしょうな}
その通りですね。髪飾り。将来的には帝国軍の士官となる人材を育成されているのが幼年学校ですから。学生時代から軍隊的な集団行動を取られるのは当然ではありますけれど。外部から見ると近寄り難いと感じてしまいますから。
『異性の女性からは、私達はそのように見えていましたか。これも新たな視点からの見方として勉強になります。フロリアーヌ女史にザスキア女史』
{カール卿は、我が主とは違った意味での知的好奇心が旺盛な、十三歳の若者ですな}
女魔法使いである私による関心事は、根元魔法にかなり偏ってていますから。広く世の中の事を知ろうとされるカール卿による好奇心の方が、いずれは御父君であらせられますツヴィングリ男爵閣下から、家督と御領地を相続される御嫡男様として、人生において役に立つと思われます。髪飾り。
{カール卿の事を、随分と御気に召されたようですな。我が主♪}
はい。その通りです。カール卿の御父君であらせられますツヴィングリ男爵閣下は、一代にて皇帝陛下から爵位を叙爵されました、非常に優れた魔法使いでありながら。御嫡男様であらせられますカール卿御本人は、天から根元魔法の素質を授からなかった一般人ですが。女魔法使いの私の事を、両親や兄弟姉妹のように、怪物を見る眼差しでは御覧になられない、非常に立派な貴公子ですから。