表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/446

エピソード13 老女教授に対する内心の不満

『それではおけの水で背中の血を洗い流しますね』


仲良く話されていた、希望ナディーネさんと真実ヴェレーナさんとハンナさんの三人に声を掛けますと、私の方を揃って向かれまして。


『ああ。頼むフロリアーヌ


『お願いをしますわね。フロリアーヌさん♪』


『えっ。治癒魔法ハイル・ツァオバーを掛ける前に、水で血を洗い流すの?』


頑丈な器具に拘束されている咎人とがびとの、拷問吏の方による巧みな鞭打むちうちにより皮膚が裂けている背中の様子を観察しながら、私はハンナさんに対して頷きまして。


『水で血を洗い流しませんと、背中の正確な状況を診断が出来ませんから。ハンナさん』


そうハンナさんに答えますと、おけを傾けて咎人とがびとの背中に水を掛け始めました。


『ぐぅうううーーーっ!』『ギシッギシッギシッ』


猿轡クネーベルを口に噛まされている咎人とがびとが、痛みから暴れようとしていますが、刑場の頑丈な器具に拘束されていますので、僅かに身体を揺らす事しか出来ませんでした。


『本当は水で洗い流した後に、消毒の為に塩を傷口に念入りに塗り込んでから、度数の高いお酒で再度洗い流した方が衛生的なのですが?』


そう話しながら、今回の治癒魔法ハイル・ツァオバーの実習講義の引率を担当なされていられます。帝国の君主であらせられる皇帝陛下の直臣の臣下でもある、帝国女騎士ライヒス・リッテリン身分の老女教授に、瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳の視線を向けますと。


軍場いくさばでは清潔な水を入手するのさえ困難な場合がありますから、手元にある物だけで対処するのも、本日の実習講義における課題の一つです。貴女は退役軍人のおじい様から、幼い頃から学んで来たはずですね。フロリアーヌ女史』


老女教授は私の事を、三十年間帝国軍で勤め上げた退役軍人の孫娘エンケリンとして見られています。


『はい。帝国女騎士ライヒス・リッテリン様。仰せの通りで御座います』


感情を出さないように淡々と事務的に、抑揚よくようの無い声で老女教授に対して丁寧に答えましたが。男爵バローン閣下の御息女であらせられる令嬢フロイラインのナディーネさんと、帝都で商売をされている免状貴族エードラー身分な豪商の家に生まれたヴェレーナさんの二人には。私が内心で老女教授に対して、不満を抱いているのを悟られたように感じました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ