エピソード129 食後の甘味
『カール卿に御勧めを頂きました、牛の腰肉を煮込んだ料理である、ターフェル・シュピッツは非常に美味しいです』
『お気に召してもらえて嬉しく思います。花女史♪』
公衆浴場での湯浴みを終えましてから、カール卿と兵士卿ザスキア女史と共に、古物市の会場近くの飲食店に再び来店をしまして、夕餉を共に摂っています。
『この飲食店のターフェル・シュピッツは絶品ですので、ギュンターや他の学友と共に食べに来ます。フロリアーヌ女史♪』
ツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様であらせられますカール卿には、移住二世という共通点のあるギュンター卿以外にも、幼年学校に御学友が居られるようです。
『私は地方部から帝都魔法学園で学ぶ為に来ましたが、入学初日にザスキア女史に親切に声を掛けて頂きましたのに、結果的にその後は一年以上も無視をする事になるような、対人関係を構築する能力が欠落している人間です』
プルップルップルッ。
「お、御気になさらないで下さいフロリアーヌ女史。わ、私の方こそ嫌われたと勝手に思い込んでいたのですから…」
もし恵さんが居なければ、私とザスキア女史は帝都魔法学園を卒業するまで、お互いに話す事も無く過ごしていたかも知れません。
『姉さんの友達は頭が良いだけでなく優しいな♪』
『ギュンターの言う通りだな♪』
暗くなってしまいました場の雰囲気を明るくする為に、ギュンター卿とカール卿の殿方の御二方が笑顔で話されましたので。私も合わせる事にしまして。
『食後の甘味は何にしましょうか?。ザスキア女史』
「え、ええとそうですね?。甘い果物はどうでしょうか。フロリアーヌ女史…」
自信なさげに私の顔色を窺うように仰られましたザスキア女史に対して、笑顔で頷きまして。
『カール卿に御勧め頂きました肉料理の後ですから、甘い果物は素晴らしい選択だと思います。ザスキア女史♪』
私が笑顔で応えましたので、ザスキア女史も安堵をされましたのか。歓心を買う為の媚びるような笑みを見せられまして。
「フ、フロリアーヌ女史にそのように仰って頂けて、身に余る光栄です♪」