エピソード127 ザスキア女史の家族と私の身内
『チャプンッ。シャアアアッ』
『本日は学生食堂でザスキア女史に古物市に誘って頂き、改めて心底よりのお礼を申し上げます』
「み、身に余る勿体ない御言葉です。花女史…」
図書館での調べ物を終えまして、ザスキア女史の弟の兵士卿と、ツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様であらせられますカール卿と共に、公衆浴場へと湯浴みに来ています。
『チャプンッ。シャアアアッ』
『ザスキア女史の弟のギュンター卿と、ツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様であらせられますカール卿と知り合えたのも、学生食堂でザスキア女史に古物市へと誘って頂けたからですから、本当に感謝をしています』
{我が主は基本的には、御自身では交友関係を広げようとはされませんからな}
帝都魔法学園にて根元魔法を学びながら、放課後は図書館で好きな読書を楽しめる今の生活に満足していますから。真実さんに帝国女騎士身分を目指すという共通目標を設定して頂けなければ、二年生の現時点で卒業後に女魔法使いとして安定した職業に就職する為の活動以外には、関心も興味も抱かなくなっていた可能性があります。髪飾り。
「フ、フロリアーヌ女史は、弟のギュンターと幼年学校で学ばれていられます、カール卿と馬が合われるように御見受けをいたしました?」
ふむ?。特に自覚はありませんでしたけれど、ザスキア女史からはそのように見えたのですね。
{ザスキア女史は常に家族以外の他者の顔色を窺いながらこれまで生きて来られたようですから、観察眼に関しては信用が置けるかと思われます。我が主}
『カール卿にもギュンター卿と同じく、姉君であらせられます令嬢星様が居られるそうですから。一歳年上の私との会話は、姉君と御話になられていられるような錯覚を覚えて、楽しく感じられたのかも知れません。ザスキア女史』
私の推量を聞かれたザスキア女史は、公衆浴場の女湯の大浴場のお湯に浸かりながら、成る程という表情を見せて頷かれまして。
「お、弟のギュンターも、姉の私とは話しをしてくれます。フロリアーヌ女史」
退役軍人の祖父が家長をしている実家では、魔法使いの祖父から唯一血統により根元魔法の素質を受け継いだ孫娘である私の事を、両親や兄弟姉妹は怪物を見るかのような眼差しで眺めていましたけれど。
『ギュンター卿は、女魔法使いでもある姉君のザスキア女史とは、仲の良い姉弟関係を築かれていられるのですね』
「は、はい。フロリアーヌ女史。仰られる通りです…」
{我が主の逆鱗に触れて怒らせたのではないかと、ザスキア女史は危惧されているようですな}
無用な心配です。私は祖父以外の身内に関しては、もう何とも思ってはいませんから。