エピソード126 使う場所を慎重に考える必要があります
「パラッ」
『この本で良いようですザスキア女史。帝国における香水の瓶の流行と製造の変遷過程が、挿絵付きで詳細に説明されています』
「は、はい。花女史。あ、有難う御座います…」
帝都魔法学園に入学して以来、一年以上に渡り通っている図書館ですので、平民身分の私には閲覧許可の降りていない禁書のある区画を除けば、建物内にどのような本があるかは、大体把握をしています。
「パラッ」
『硝子に融解したミスリル銀を混ぜ合わせて、魔力を吸収する魔道具を製造する技術が確立して以降に造られた香水の瓶だと思われますので。最初からある程度は年代を絞り込み調べる事が出来ます。ザスキア女史』
「は、はい。フロリアーヌ女史…」
図書館の机の上に、ザスキア女史が古物市にて購入されました、魔道具でもある香水の瓶を置き、形状からいつ頃に製造されたか絞り込みます。
「姉さん。もしかして物凄く頭が良い友達なのか?」
「しっ、失礼でしょ、兵士っ!。フロリアーヌ女史は帝都魔法学園の二年生の女子学生の中で、唯一三種類の根元魔法を同時に発動する事が可能な、非常に優れた選良な女魔法使いなのよっ」
「パラッ」
ザスキア女史とギュンター卿の姉弟が、仲良く小声で話されている間も。私は瑠璃之青の瞳を動かしながら、本の挿絵と机の上に置いてある香水の瓶を交互に見比べまして、いつ頃に製造されたか確認していきます。
「パラッ」
ふむ?。
『挿絵とは色合いは異なりますけれど、形状には共通点があると思われます。フロリアーヌ女史』
私の隣に座られまして、本の挿絵を横から覗き込まれていましたカール卿の見解に対して。私も真実さんに言われて伸ばしています金髪を揺らしながら頷き、同意を示しまして。
『はい。カール卿の仰られる通りだと思われます』
{やはり御領地と領民を御治めになられていられます、貴族諸侯であらせられますツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様ですと。香水の瓶の形状に関しても、社交界の常識としてある程度は御存知なようですな。我が主}
少なくとも私のような、地方部出身の平民身分の村娘よりは、ツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様であらせられますカール卿の方が詳しいのは不思議ではありません。髪飾り。
『次は付与されている根元魔法を調べ…』
「ど、どうかされましたか?。フロリアーヌ女史?」
言葉を途中で切りました私に対して、ザスキア女史が心配そうな眼差しを向けましたので。
『本の内容が正しければ、一時的に魔力を強化する効果のある根元魔法が付与されているようです。ザスキア女史…』
歯切れ悪く説明する私の様子を、ザスキア女史とギュンター卿の姉弟が不思議そうな表情を浮かべながら御覧になられますと。
『使い所が難しい副作用を伴う、一時的な魔力の強化効果のようですね。フロリアーヌ女史』
隣の席のカール卿の言葉に頷きまして。
『はい。使う場所を慎重に考えませんと、厄介事に巻き込まれる恐れのある副作用です。カール卿』