エピソード122 古物市を一緒に見て回り
『掘り出し物の皮剥ナイフが手に入ったな♪』
血糊が刃物に付着しないようになる根元魔法が付与されている、皮剥ナイフをお手頃価格にて購入された希望さんが、上機嫌に笑顔で話されましたので。
『私が生まれ育ちました帝国の地方部には、食材持ち込み可の飲食店がありました。帝都にも同じような飲食店があれば、家畜市場で購入した家畜を持ち込み屠畜してから解体をして、生き物を相手に切れ味を試す事も出来ますね』
地方部出身の平民身分の村娘である私の言葉に対して、男爵閣下の御息女であらせられます令嬢のナディーネさんは、少しの間考え込まれましてから。
『帝都の貧民窟には、そうした食材持ち込み可な飲食店があると、以前に爺さんが話していた記憶があるが。アタシも一応は男爵家の娘だからな、貧民窟への立ち入りは避けている』
{禁止されているでは無く、腕輪の主が自らの意志により貧民窟への立ち入りを避けているのが、軍人一家の生まれを感じさせますな。我が主}
退役軍人の祖父を家長とする農家で生まれ育ちました私も、ある程度はナディーネさんの考え方は理解する事が出来ます。髪飾り。
『私は自費出版の回顧録を購入しましたが、恵さんとザスキア女史は、何か気になる品はありましたか?』
私の問いに対してハンナさんとザスキア女史は、古物市を見回されまして。
『うーーん。私は今の所は無いかな?。古物市って、お菓子とかは売っていないんだね』
幼馴染みであるハンナさんの話を聞かれたナディーネさんが、苦笑を御浮かべになられまして。
『古物市だぜ。ハンナは本当に食い気にしか関心が無いお子様だな』
『何よう。言ってみただけじゃないっ!』
{腕輪の主とハンナ女史は、本当に仲睦まじい幼馴染みですな。我が主}
帝都魔法学園で共に根元魔法を学ぶ二年生の女子学生として、ナディーネさんとハンナさんの御二方には、本当に助けられています。髪飾り。
『ザスキア女史は何かありますか?』
頭の中で、意志ある魔道具でもある遺失魔道具の髪飾りと念話による会話をしながら、口から言葉を発して話すのにも、大分慣れて来たと我ながら思います。
「は、はい。花女史。あの香水の瓶からは、根元魔法が付与されているのを感じます…」
ザスキア女史の視線の先を追いまして、瑠璃之青の瞳に魔力を集中して見てみますと。
『確かにザスキア女史の仰られる通りですね。手に取り調べてみますか?』
私と会話をしながら一緒に古物市を見て回れるのが嬉しいらしいザスキア女史は、媚びるような笑みを見せられまして。
「は、はい。フロリアーヌ女史さえ宜しければ、見てみたく思います」