エピソード12 指名された四人
『全員。前垂れは身に着けましたね?』
『『はい。帝国女騎士様』』
本日の治癒魔法の実習講義を引率なされていられる老女教授は、教え子である私達の返事に御頷きになられますと。
『令嬢希望女史とお仲間の三人は、お互いに話しをされていて余裕があるようですので。貴女達四人で、鞭打された咎人に対する治癒魔法の行使を最初にするように』
「うわっ。聞かれてた…」
『何か言いたい事がありますか?。恵女史』
『『いっ、いえっ。何もありませんっ!』』
私達四人で拷問吏の方に鞭打された咎人に対して、治癒魔法を最初に行使する事になりましたが。帝都魔法学園で根元魔法を学ぶ他の学生の間からは、其見た事かという気持ちを込めた視線を向けられているのを感じました。
『しゃーねーなぁ。やるぞハンナに花に真実』
私達の中では一番背の高い、灰白色の髪の毛と藍色の瞳をされている、男爵閣下の御息女であらせられる令嬢のナディーネさんに対して。ハンナさんと私とヴェレーナさんは揃って頷きまして。
『う、うん。ナディーネ』
『解りました』
『楽しみですわね♪』
気風の良い話し方とは裏腹に、貴族諸侯の家門で生まれた育ちの良さを後ろから見ても感じさせる、背筋を伸ばした美しい姿勢で歩いて移動されるナディーネさんを先頭に、刑場の中に設置されている頑丈な器具に、俯せの体勢で拘束されている鞭打された咎人に四人で近付きました。
『ふしゅーっ、ふしゅーっ、ふしゅーっ』
『器具に拘束されているのは解るけれど、何で猿轡を口に噛まされているのかな?』
素直に感じた疑問を話すハンナさんに対して、幼馴染みのナディーネさんが笑いながら。
『拷問吏が鞭打した時に、痛みから舌を噛まないようにする為に決まっているじゃねえか』
ナディーネさんによる説明を聞いたハンナさんは、成る程という可愛らしい表情で頷かれまして。
『そうなんだ。やっぱりナディーネは鞭打とかに詳しいね♪』
ハンナさんの笑顔を向けられたナディーネさんは、苦笑を浮かべられまして。
『あのな。アタシは暇潰しで奴隷を鞭打、悪趣味な令嬢や淑女じゃねえぞ』
『あら。違うのですか?。意外でしたわナディーネさん♪』
銀白色の髪の毛と、緑青色の瞳をされている、免状貴族身分のヴェレーナさんに対して。ナディーネさんは藍色の瞳の視線を向けて、睨み付けられまして。
『おい。ヴェレーナ。アタシを何だと思っていやがる』
ナディーネさん三人が仲良く話されている間に、上下水道が整備されている帝都の利点を活用しまして、蛇口を開けて桶に水を入れました。