エピソード119 帝国に貢献するには
『学生食堂で古物市に誘って頂きまして、改めて御礼を申し上げます。ザスキア女史』
「も、勿体ない御言葉です。花女史」
飲食店で、幼年学校で寄宿生活を送りながら学ばれているカール卿と兵士卿の御二方と話をしましてから。私とザスキア女史の二人で、再び古物市が開催されている会場まで戻って来ましたが。
『異国出身の平民身分から、一代にて男爵の爵位を皇帝陛下から叙爵されました、生ける伝説とも呼べる立志伝中の御方であらせられます、ツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様のカール卿と面識を得て話が出来たのは、非常に有意義でした』
古物市の会場を見て回りながら話す私の様子を、ザスキア女史は慎重に観察をされて表情を窺われましてから。
「フ、フロリアーヌ女史は、退役軍人の御爺様から、ツヴィングリ男爵閣下の事は御聴きされていられるという事は…」
帝都魔法学園にて、共に根元魔法を学ぶザスキア女史の言わんとされる意味を、女魔法使いとして推察をしまして。
『ツヴィングリ男爵閣下は、単身にてシュヴァイツ共和国のゾロトゥルン州から、帝国へと移住されて来られましたが。退役軍人の祖父と同じく、天から根元魔法の素質を授かりし魔法使いでもある事は聞き及んでいます。ザスキア女史』
そしてツヴィングリ男爵閣下の御嫡男様であらせられますカール卿は、御父君から根元魔法の素質を受け継がれなかった事は。女魔法使いである私からしますと、身に纏う魔力の総力にて一目瞭然です。
「わ、私の家も、外務省に勤務されている帝国騎士身分の父は魔法使いですけれど、弟のギュンターは一般人なのです。フロリアーヌ女史…」
{根元魔法の素質はある程度は血統により受け継がれますが、御父君が優れた魔法使いだからといって、必ずしも御令息様も魔法使いとなれる訳ではありませんからな。我が主}
その通りですね髪飾り。私も家族で魔法使いの祖父から唯一根元魔法の素質を受け継いだ孫娘の女魔法使いですから。両親や兄弟姉妹からは、怪物を見るかのような眼差しを向けられるのに、幼い頃から慣れています。
『御家族の中では、御父君であらせられます帝国騎士様と、御息女のザスキア女史だけが、天から根元魔法の素質を授かりし魔法使いと女魔法使いなのですか?』
私の問いに対してザスキア女史は、歓心を買う為の媚びを売るような笑みを見せられまして。
「は、はい。フロリアーヌ女史。父と娘の私だけが、魔法使いと女魔法使いの家族です…」
{御家族の中では御父君であらせられます男爵閣下だけが、一般人の腕輪の主とは、逆の家族関係のようですなザスキア女史は。我が主}
希望さんの御父君であらせられます男爵閣下は、宮城にて皇帝陛下に御仕えされていられます官吏として精勤なされまして。ザスキア女史の御父君であらせられます帝国騎士様は、外務省にて勤務されていられますから。帝国に貢献するには、必ずしも天から根元魔法の素質を授かりし魔法使いである必要はありません。髪飾り。