エピソード11 気心が知れている四人とその他大勢
『ヒュウンッ、バチイッ!』『『ぐぅうううーーーっ!』』
「うわ、痛そう…」
拷問吏の方が振るう革製の鞭がしなり空気を切る音に続いて、鞭打によりもたらされた激痛に対して、くぐもり声の悲鳴が聞こえますと。恵さんが近所に雷が落ちた時の子犬のような表情を浮かべました。
「だから言ったろ。治癒魔法の実習講義を行う為の人体実験に使う、咎人を鞭打光景は、お子様のハンナには刺激が強ぇってな」
私達四人の中では一番背の高い希望さんが、気風の良い口調にて幼馴染みのハンナさんを慰めますと。
「うーっ。ナディーネだって私と同い年の十四歳でしょ。花と真実も平然としてるね?」
幼馴染みのナディーネさんと軽口を叩いて気を取り直したハンナさんが、私とヴェレーナさんに対して不思議そうな表情を向けましたので。
「退役軍人の祖父は自作農ですので、奴隷身分の農奴は所有されていませんでしたが。隣接する御領地を御治めになられていられました御代官様から、反抗的な農奴を痛め付け過ぎて死に掛けた時に頼まれまして。魔法使いの祖父か、女魔法使いな孫娘でもある私が、治癒魔法で癒す経験を幼い頃から積んで来ました」
地方部出身の平民身分である私による説明を聞かれた、貴族諸侯であらせられる男爵閣下の御息女でもある令嬢のナディーネさんが。灰白色の髪の毛を揺らしながら頷かれまして。
「反抗的な農奴は適度に痛め付けねえと直ぐに増長するからな。かといって所有物の農奴を殺すのは勿体ねぇから、死なない程度に痛め付けて屈服させる匙加減が難しいからな」
一年生の時からナディーネさんと親交のある私は、御領地と領民を御治めになられていられる男爵閣下の御息女でもある令嬢のナディーネさんによる話しに、今更驚きはしませんが。実習講義に参加されている他の学生達の中には、怯えた眼差しをナディーネさんに対して向けていられる人も居ました。
『ヒュウンッ、バチイッ!』』『『ぐぅうううーーーっ!』』
「私の場合は拷問吏の方が使用なされていられる革製の鞭を、御父様が経営なされていられる商会が納入をさせて頂いておりますから。幼い頃から性能試験をする様子を見学させて頂きましたわ♪」
笑顔で説明をされた、銀白色の髪の毛と緑青色の瞳をされているヴェレーナさんに対して。灰白色の髪の毛と藍色の瞳をされているナディーネさんと、金髪と瑠璃之青の瞳をしている私の二人は、揃って得心した表情を浮かべながら頷きまして。
「ヴェレーナの親父さんは、高品質な商品を取り扱う事で有名な、帝都でも評判が良い商人だからな」
「ヴェレーナさんは、御父君の薫陶を受けて成長されたのですね」
ヴェレーナさんとナディーネさんと私の三人による会話を聞いていた学生の多くが、お互いの顔を見合わせている様子を、ハンナさんが困ったような表情で眺めていられました。