エピソード105 ヴェレーナさんによる今後の予定
『やはり真実さんは凄いと思います』
『嬉しく思いますわ。花さん♪』
貴族街にあります、希望さんの御父君であらせられます男爵閣下の上屋敷にて、美味しくて滋養の摂れる夕餉を頂きましてから。根元魔法の帰還を使い、帝都魔法学園の学生寮の女子寮の自室に戻りましたが。
『帝国の君主であらせられます皇帝陛下の御信任の厚い男爵閣下を前にされまして、ヴェレーナさんは平常心を保たれていられました。私には無理でした』
女子寮で隣の部屋のヴェレーナさんと、私の部屋で二人……。意志ある魔道具でもある遺失魔道具の、髪飾りと首飾りは居ますけれど。同い年の女魔法使いという意味では、二人きりで話しをしています。
『ナディーネさんの御父君であらせられます男爵閣下は、フロリアーヌさんの事も御気に召されたように御見受けいたしましたわ』
ふむ?。ヴェレーナさんによる見立てなら、間違いは無いと思われますけれど。
『放火殺人の嫌疑が完全に晴れた事により、非常に御世話になりました男爵家の皆様方への御恩返しを行えますから。何か御役に立てれば良いのですけれど』
今宵までは貴族街にあります男爵閣下の上屋敷にて、湯浴みを済ませてから夕餉を御馳走になりましたが。明日からは以前のように帝都魔法学園での講義を受講した放課後には、図書館で大好きな読書を行いましてから、公衆浴場にて湯浴みを済ませる日常に戻ります。
『フロリアーヌさんは、本当に律儀な性格をされていられますわね♪』
ヴェレーナさんは笑顔で仰られましてから、含みのある表情にて。
『アンリ卿が仰られましたように、放火殺人は一種の警告の意味もありましたから。フロリアーヌさんや私を攫い、身体ごと意志ある魔道具でもある遺失魔道具の首飾りと髪飾りを手に入れようとする動きは、少なくとも暫くの間は無いと思われますわね』
ヴェレーナさんは幼い頃に、身代金目的の営利誘拐の被害に遭いかけた事があるそうですから、身辺への警戒は人一倍強い人物です。
『公衆浴場で湯浴みをする際には、装飾品の髪飾りを大浴場まで持ち込まないといけませんから。その点に関しては、普段以上に目立ちます』
金髪と瑠璃之青の瞳の組合せは、帝国では上級貴族の皆様方に多く見られますので。利用者の大半が平民身分の公衆浴場では、ただでさえ私は他の入浴客と比べると目立ちます。
『やはり一日も早く帝国女騎士身分を手に入れて、私とフロリアーヌさんだけでお風呂のある部屋を借りて同棲したいですわね♪』
ふむ?。帝国女騎士身分を目指すのは以前から共通の目的でしたけれど、いつの間にかその後の私はヴェレーナさんと同棲する事になっているようです。