エピソード103 私には勿体ない学友
『花さんが希望と仲良くしてくれて、父親として嬉しく思うよ♪』
『恐悦至極に存じ上げます。男爵閣下』
美味しく滋養の摂れる夕餉を頂いています間は、男爵家の御家族の皆様方による一家団欒を邪魔しないように黙っていましたが。食後の紅茶を飲みながら男爵閣下は、柔和な笑みを御浮かべになられますと。
『ナディーネは幼馴染みの恵さんとは仲良しなのだけれど、他には同年輩の同性の女の子の友達が居なくてね』
御父君であらせられます男爵閣下の御言葉を聞かれたナディーネさんは、灰白色の髪の毛を揺らしながら頭を振られまして。
『親父とお袋は、アタシの事をいつまで小さな幼女だと考えてんだ?』
不満気に話された御息女であらせられます令嬢のナディーネさんに対して、男爵閣下は優しい眼差しを向けられながら。
『親にとっては大切な娘は、いつまでたっても可愛いらしい女の子のままだよ。ナディーネ♪』
{腕輪の主は、御家族から本当に大切に慈しまれて成長したようですな。我が主}
髪飾りにも、慈しむという概念が理解出来るのですか?。
{役に立つ手駒を大切に扱うという意味では、理解可能な概念となります。我が主}
『帝都魔法学園にて、教鞭を執られている帝国女騎士殿から、既に聞き及んでいる事だとは思うけれど。貴女が金髪に着けて、今も念話による会話を行っていた髪飾りに関連して、当面は狙われる心配はせずに済むからね。フロリアーヌさん♪』
……帝国の君主であらせられます、皇帝陛下の御信任の厚い官吏として御仕えされていられます男爵閣下にあらせられましては、小娘に過ぎない私の内心は全て見透かされていられるようです。
{天から根元魔法の素質を授からなかった一般人であっても、恐ろしい人物は居られますからな。我が主}
『親父。あまりフロリアーヌを警戒させるなよ。真面目な性格をしているから、物事を真剣に考え込み過ぎる癖があるからな』
ナディーネさんの言葉に、幼馴染みのハンナさんも同意されまして。
『生真面目な性格はフロリアーヌの魅力の一つだけれど、近寄り難いと良く知らない人達に感じさせる理由ともなっているよね』
ふむ?。近寄り難いですか。
『フロリアーヌさんは真剣に物事を考えられる時は無表情になりますから。知らない人から見ますと、不愉快に感じているように見えなくもありませんわね』
真実さんから見ても、真剣に物事を考えている時の無表情な私は、周囲から見ますと近寄り難いと感じるようです。
『ザスキア女史に一年以上誤解をさせたのも、私の態度に問題があったようですね』
私の感想に対してナディーネさんとハンナさんとヴェレーナさんの御三方は、揃って苦笑を見せられまして。
『こうして打ち解けて話せば、フロリアーヌもハンナのように周囲を気遣う性格だと解るんだがな』
『やっぱり金髪と瑠璃之青の瞳の組合せが、上級貴族の皆様方を連想させて近寄り難いと誤解させるよね』
『フロリアーヌさんのそうした近寄り難いと感じさせる雰囲気も、私は魅力的であると思いますわね♪』
{腕輪の主と、ハンナ女史と、首飾りの主は。良き御学友ですな。我が主♪}
はい。髪飾り。私には勿体ない学友です。