エピソード102 関係良好な御家族
『親父と会うのは数ヶ月振りだな』
『希望の言う通りだね。最近は特に忙しくてね』
帝都の貴族街にあります、ナディーネさんの御父君であらせられます男爵閣下の上屋敷を今宵も訪れていますが。宮城にて官吏として宮仕えなされていられます御当主様が、本日は御家族と共に夕餉を摂られていられます。
『親父が珍しく、泊まり込みで働いている宮城から上屋敷に帰って来れたのに。三人いる兄貴達は、誰も来られ無ぇのかよ』
ナディーネさんは、気風の良い話し方をされます令嬢ですけれど。久し振りに御家族の全員で集まれる機会に、帝国騎士身分の兄君の御三方が誰一人として来られない事には、非常に落胆なされていられるようです。
『交代制で領主代行をしている三男は、領内で領民と家畜を襲う恐れがある狼の群れを発見して、被害が出る前に狩猟にて駆除をしているそうだよ。現役の帝国軍人である長男と次男に関しては、軍務省勤務の父上の方が詳しいと思う』
家督と御領地を男爵閣下に御譲りになられました後も、准将閣下の軍階級にて軍務省での勤務をされていられますナディーネさんの御爺様が。
『儂の孫は二人とも優秀だからな。皇帝陛下の御信任が厚い官吏として宮城にて精勤をしている父親と同様に、次から次へと仕事を任されている』
誇らしげに御話になられました准将閣下の御言葉に、男爵閣下と男爵夫人様とナディーネさんは、揃って苦笑を御浮かべになられまして。
『自慢の息子達ですけれど、無理をし過ぎて身体を壊さないかが心配です』
『一番心配なのは貴方ですわ。せめて毎月一回は、上屋敷に御戻り下さい』
『お袋の言う通りだぜ親父。万ヶ一親父が過労で倒れたら、兄貴達への負担が更に増えんだからな』
御正妻であらせられます男爵夫人様と、愛娘のナディーネさんによる御気遣いを受けられした男爵閣下は、嬉しそうに微笑まれまして。
『確かに愛する妻と可愛い娘の言う通りだね。留意する事にするよ』
{男爵閣下は、御家族の中では唯一天から根元魔法の素質を授からなかった一般人ですが。家族仲は良好なようですな?。我が主}
私にもそのように見えます髪飾り。帝国の君主であらせられます皇帝陛下の御信任の厚い官吏として、宮城にて精勤なされていられる御方ですから。天から根元魔法の素質を授からなかった一般人であっても、貴族諸侯であらせられます男爵家の家長としての責任と役割は、十分に果たしていられます。